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地震で地盤が崩れたら、住宅はどうにもならない。熊本地震の被災地を見て、こう思った実務者は少なくないだろう。一方で、地盤の災害から家を守るために立ち上がった実務者がいる。彼らの取り組みを伝える。

 マルス建設(愛知県豊田市)の鈴木善博取締役は、擁壁が崩れて家が転倒している熊本の現場に衝撃を受けた〔写真1〕。「改めて住宅会社の責任の重さを痛感した」と話す。

〔写真1〕マルス建設の鈴木善博取締役は、熊本地震の被災地で擁壁が崩れて家が転倒している現場を見て衝撃を受けた。「初めて見る激しい壊れ方だった。住宅会社には安全な住宅を提供する責任があるが、地盤災害のことを考えると恐ろしくなった」と話す(写真:日経ホームビルダー)
〔写真1〕マルス建設の鈴木善博取締役は、熊本地震の被災地で擁壁が崩れて家が転倒している現場を見て衝撃を受けた。「初めて見る激しい壊れ方だった。住宅会社には安全な住宅を提供する責任があるが、地盤災害のことを考えると恐ろしくなった」と話す(写真:日経ホームビルダー)
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 鈴木氏に被災地を案内したエムズ構造設計事務所(新潟市)の佐藤実社長は、「本来、地盤や基礎の設計責任を負うのは建築士だが、建築士が地盤のことを地盤調査会社や杭の施工会社に任せていることが被害を広げている」と指摘する。

 それを聞いた鈴木氏は、自社で杭や基礎を設計しようと決意。ただ、擁壁のある宅地で、新築工事にすぐ取り掛からなければならなかったので、まずはソイルペディア(東京都中央区)に地盤調査と基礎・杭の設計、上部の構造計算を依頼した〔写真2〕。

〔写真2〕高さ2mの盛り土で新築に挑む
〔写真2〕高さ2mの盛り土で新築に挑む
マルス建設が熊本地震後に設計に取り掛かった住宅の敷地。擁壁に高さ2mの間知石積みが使われている(写真:マルス建設)
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 ソイルペディアは地盤調査時に目視で擁壁の安全性を確認したうえ、擁壁に近い場所で地盤補強する場合は、変位を引き起すリスクの低い鋼管杭を勧めた〔図1〕。そのうえで、上部構造の実荷重に基づき、基礎梁の仕様や鋼管杭の本数、配置を決めた〔写真3、図2〕。

〔図1〕擁壁の考察が書かれた地盤調査書
〔図1〕擁壁の考察が書かれた地盤調査書
ソイルペディアが作成した地盤調査報告書。構造専門の建築士と地盤の専門家がそれぞれ考察を記載する(資料:ソイルペディア)
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〔写真3〕基礎は地中梁で設計
〔写真3〕基礎は地中梁で設計
ソイルペディアが基礎の検査を実施している様子。基礎はほとんどの箇所で地中梁にして人通口による断面欠損をなくした(写真:マルス建設)
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〔図2〕柱位置と杭の位置をそろえる
〔図2〕柱位置と杭の位置をそろえる
杭は均等に配置するのではなく柱の下に配置して、柱の軸力が杭に流れるようにした(資料:ソイルペディア)
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 同社の佐藤一枝社長は、「地盤調査、基礎・杭の設計、上部の構造計算は別々に行われるのが普通だが、当社はそれを連動させた三位一体の設計を実施している。その方が構造的な信頼性が高まるからだ」と話す。