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使い方の要望をしっかり聞いたうえで、「形」の答えは設計者が出す─。
プレゼンテーションに対するシーラカンスK&Hの考えは明快だ。
その過程では、かるたや模型写真、CGを駆使して共通理解を育んでいく。

ポイント1 「大切にすること」をかるたで引き出す

 「うっどでっき」「おーぷんすぺーす」「かいだん」「じしゅうかうんたー」「ふつうきょうしつ」……。「学校カルタ」と名付けたその札には、空間や部位の写真と名前が記されている。2チームに分かれたワークショップの参加者は、7階建て校舎の断面を描いた図に札を並べ、それぞれの階に欲しいと思う機能を示していく〔図1〕。

かるたを用いたワークショップ
〔図1〕希望する部屋構成をまとめる
〔図1〕希望する部屋構成をまとめる
作業結果をまとめた図。参加者からの声を総括し、縦のつながり創出や生徒と教員との距離感といったポイントをK&Hが書き出している(資料:シーラカンスK&H)
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北区立田端中学校の基本設計で5回のワークショップを実施。グラウンドをできるだけ広く確保したいという要望を受け、第3回までに屋上プール付きの7階建て校舎とする案をまとめた。第4回に7階建ての断面配置を検討した。

 学校カルタは工藤和美氏と堀場弘氏が率いるシーラカンスK&H(以下、K&H)が考案した〔写真1〕。「具体的なイメージが分かる写真を使うと、専門外の参加者でも建築の話題に入りやすい。ワークショップで出て来た意見をもとに、学校づくりで関係者が何を大事にしているのかを絞り込んでいく」。工藤氏は、かるたを使う狙いをこう話す。

〔写真1〕部屋や部位を写真で示す
〔写真1〕部屋や部位を写真で示す
学校建築の要素を拾い出した学校カルタ。室名を記載した札のほか、「木の内装」などイメージを示した札もある(写真:日経アーキテクチュア)
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 2018年度の使用開始を目指す北区立田端中学校(東京都)の計画では、地域住民や保護者、学校関係者を集めてワークショップを5回実施した。かるたを用いた冒頭の作業は、第4回に行ったものだ。

 K&Hは完成した2チームの「カルタ断面図」から「生徒の移動動線や避難動線を考慮して3階から5階に普通教室を置く」、「管理ゾーンと体育館を2階にまとめる」といった方針を引き出し、計画案に反映させた。ワークショップを見ていた北区の担当者からは、対話型設計の在り方を高く評価された。

 近年、公共建築の計画では、利用者を対象にしたワークショップを行うケースが増えている。こうした場でK&Hが留意するのは、「形の好き嫌い」へと話が流れないようにすることだ。「利用者側には建築の『使い方』に対する希望を聞き、『形』という答えは設計者が出す」(工藤氏)という役割分担を明確に意識する。

 06年に完成した坂井市立丸岡南中学校(福井県)は、そんなやり取りが順調に進んだ事例の1つだ。教科ごとの教室を備えた教科センター方式の新設校。プロポーザルで選ばれたK&Hは、着任予定の教師とのワークショップを通して当初案を大幅に修正しながら設計を進めた。

 各教科の教師には「どんな授業をしたいのか」を聞いた。例えば、理科室ではたくさんある実験器具が見えると楽しいという話から、ショーケースのように器具を展示するプランを提案した。200分の1の模型をつくっては話し合い、案を練り直した。

 教師から出てくる話は、計画の骨格に関わる内容から内装レベルのものまで千差万別だ。それでも「ヒアリングのテーマを細かく分けると話が出にくくなる」と考え、要望は最初から幅広く出してもらった。

 体育館の位置や校庭の見え方など、配置計画に直結する要望は初期段階に反映し、教室内の黒板や掲示板の設置に関する要望は実施設計時まで温めておく。要望のレベルを整理し、計画の進行に応じて適切に対応策を埋め込んでいくのは設計者の役割だ。