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蓄熱体からの輻射によって気温を一定に保つ輻射冷暖房が、大規模オフィスなどにも導入され始めた。従来、リスクとされてきた温冷水の漏れの問題を、解決する手立ても見えてきた。今後、医療施設や福祉施設をはじめ、一般の建物にも広がっていく可能性を秘めている。

 2016年秋の完成に向けて工事が進む東京都千代田区の小学館ビルの建て替えプロジェクト。ここで、外断熱を施した躯体への蓄熱による輻射冷暖房という、珍しい空調システムが採用される〔図1〕。

〔図1〕蓄熱した躯体からの輻射で冷暖房
〔図1〕蓄熱した躯体からの輻射で冷暖房
スラブは凹凸が連続する断面形状とし、その空洞部分を給排気や排煙のダクトとして利用する(資料:日建設計)
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 採用に至った背景には、発注者からの要望があった。かつての小学館の本社屋では、建物内に一年中、昼夜を問わず働く人がいて、空調はつけっ放しだった。その働き方は変わらないものの、新社屋ではもっと省エネを進めたい、というものだった。

 そこで設計者の日建設計は、地上部分の鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の躯体をまるごと断熱材で覆い、躯体を蓄熱体として利用。そこからの輻射によって屋内の気温を一定に保つ方式を提案した。「暖かい、冷たい、と感じるような空調ではなく、『感じない』空調を目指した。これほど本格的な躯体蓄熱と輻射冷暖房の組み合わせは、我が社でも例がない」と、同社エンジニアリング部門の佐藤孝輔設備設計部長は語る。

 新社屋は地下3階・地上10階建て、延べ面積は約1万8000m2に上る。免震を採用し、地上階の直下に免震層を設けるため、その上部10階分の躯体を包むように、厚さ30mmの断熱材を張り巡らせる。内部の空調は、空気を直接、暖めたり冷やしたりするのではなく、温冷水を通して躯体の温度を制御することで、間接的に内部の気温を調節する。実験で性能を確認した〔写真1〕。

〔写真1〕躯体の表面温度の変化を実験
〔写真1〕躯体の表面温度の変化を実験
冷房時に、冷水を止めても数時間は躯体の表面温度がほとんど変化しないことを確認した(写真:日建設計)
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