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増税後の17年に需要の谷

  • 97年増税時は大幅な反動減
  • 14年増税が需要を先食い

 駆け込み需要を試算するに当たり、過去2度の消費税引き上げと建築需要との関係を分析した。消費税は1989年に導入され、97年に3%から5%に引き上げられた。景気低迷期に増税が実施された典型的な例だ。

 当時はアジア通貨危機で金融不安が広がり、消費意欲が大きく低下していた。そこに増税が拍車をかけ、98年の建築着工床面積は前年比14.0%減、住宅着工戸数は前年比13.7%減と大幅な反動減を招いた〔図2、3〕。

〔図2〕過去2回の増税時より駆け込み需要は縮小
〔図2〕過去2回の増税時より駆け込み需要は縮小
過去の増税と今回(増税ありとなし)で、前後3年間の建築着工床面積を比較。建築着工床面積は国土交通省の建築着工統計に基づき、16年4~6月期以降はサトウファシリティーズコンサルタンツの予測値(資料:サトウファシリティーズコンサルタンツ)
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〔図3〕増税先送りの場合は変動が小幅に
〔図3〕増税先送りの場合は変動が小幅に
今後の住宅着工戸数は増税前の駆け込み需要が前年比4万戸増、増税後の反動減が同9万戸減となると予想した。建築着工床面積は国土交通省の建築着工統計に基づき、16年4~6月期以降はサトウファシリティーズコンサルタンツの予測値(資料:サトウファシリティーズコンサルタンツ)
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 14年に消費税5%から8%へ引き上げられたとき、直前の13年はアベノミクスによる好景気と駆け込み需要が重なって建築市場が過熱していた。設備投資が急増し、民間非住宅の着工床面積は前年比11.8%増。公共事業でも東北震災復興事業が本格化し着工床面積は前年比11.4%増で、そこに駆け込み需要で住宅着工戸数が前年比11.1%増となり、市場を沸騰させた。

 そうして振り返ると、過去の消費税増税では、駆け込みによる建築需要が前年比で約1割増。逆に増税後は反動減で1割戻す、というパターンがみられた。特に、住宅市場は個人消費に大きく関わるので顕著である。持ち家住宅の着工戸数は13年の駆け込みで前年比13.9%増、14年の反動で前年比19.6%減、と消費税増税の前後で際立って影響を受けていた。