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タイルで壁の色を操る

 施設の個性を際立たせるため、坂氏は建物が刻々と表情を変える姿にもこだわった。

 例えばホワイエの壁や天井には、緑から赤に玉虫のように色が変わる塗装タイルを用いた。塗装は2種類の塗料を使い、光の当たり方や見る角度によって色が変わる仕掛けだ。

 オディトリアムのファサードには、イタリアのメーカーと共同開発したモザイクタイルを全面的に敷き詰める。モザイクタイルも緑から赤に変わる工夫を凝らした。建物を囲む回遊通路を歩くと、一歩ごとに壁の色が変わる様子が楽しめる。

 PVパネルは、オディトリアム側面の南東部分に沿うようにレールを敷く。それにより、太陽の方向に合わせて、PVパネルを可動させる仕組みとした。

 内装には坂氏が得意とする紙管を多用する。4種類の太さの紙管を輪切りにして六角形の木製フレームに収め、オディトリアムの大きく波打つ天井にランダムに並べるのだ。紙管が生み出す模様で、照明などの設備を適度に隠す。紙管の天井は音を透過するので、その上にあるもう1つの天井に音を反射する機能を持たせるようにした。

 一方、ロック音楽やテレビ番組の収録などに使われる予定のグランド・サルは、コンクリート壁で覆う。屋根には屋上庭園も設ける〔写真2〕。施設はホールを使わない時間でも、ホワイエや屋上庭園を開放し、市民が自由に使えるようにする。

〔写真2〕グランド・サルに屋上庭園
〔写真2〕グランド・サルに屋上庭園
上の写真は建設中の様子。手前が多目的ホール「グランド・サル」の屋根に当たる。斜面に緑化を施し、屋根の上に散策できる屋上庭園を設ける。下の図は屋上庭園のイメージ(写真:Nicolas Grosmond、資料はShigeru Ban Architects Europe-Jean de Gastines Architects-BTP)
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 設計を担当したShigeru Ban Architects Europeの丸山真史氏は、「従来は建物内で完結する音楽ホールが多かった。シテ・ミュジカルはコンサートの合間にバーでくつろいだり、回遊通路で360度の景色を楽しめたり、開放感のある音楽ホールになる」と胸を張る〔図2、写真3〕。

〔図2〕島の形を船に見立てる
〔図2〕島の形を船に見立てる
シテ・ミュジカルの敷地はセーヌ川の下流側、島の西端にある。パースは右が西側。船の上に鳥かごと銀色の帆が載ったイメージで計画した(資料:Shigeru Ban Architects Europe-Jean de Gastines Architects-MORPH)
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〔写真3〕ジャン・ヌーヴェルの基本計画を踏まえる
〔写真3〕ジャン・ヌーヴェルの基本計画を踏まえる
「マスターアーキテクトであるジャン・ヌーヴェル氏がつくったデザインガイドに基づいて、コンクリートをマッシブに使うよう求められた。コンクリートの色合いもアトリエ・ジャン・ヌーヴェルとやり取りし、合意の上で決めた」と、丸山真史氏は言う
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