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幻となった坂氏のホール

 田根氏と藤本氏がコンペに参加する際に選んだ対象地は、パリ市内でも比較的周縁部にあった。それに対し、パリ中心地に挑んだのが坂茂氏だ。惜しくも次点だったが、パリ4区のセーヌ河岸に面し、歴史的な建築物に挟まれた約8400m2の整備計画を提示した〔図5〕。

〔図5〕鉄製カーテンで劇場の魅力高める
〔図5〕鉄製カーテンで劇場の魅力高める
坂氏が次点となった提案。着席で約250人規模の音楽ホールが入る施設だ。上の図は、セーヌ川から見た夜景のイメージ。下の図は通りから見たイメージで、卵形オブジェの浮遊感を高めるために、オブジェを囲む2階以上の床は艶消しガラスにする考えだった(資料:Shigeru Ban Architects Europe-Jean de Gastines Architects-Perspective RSI-STUDIO)
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 用途は、音楽ホールと裏庭、地下の商業施設だ。吊り下げられた木造の卵形のオブジェでホールを包み込み、建物の中で地上から3m浮かぶようにした。ホールの舞台後方はセーヌ河岸に開放できる仕組みで、セーヌ河岸をホールの装飾の1つに見立てる計画だった。

 「日本では美術館を設計した実績がなければ、美術館のコンペには参加できない。フランスがすごいのは、実績がなくてもチャンスを与えるところだ」と、坂氏は言う。世界の設計者たちの英知を集め、パリは今、生まれ変わろうとしている。