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 熊本地震で被災した熊本城で復旧工事が始まった。熊本市は石垣の崩壊や建造物の倒壊を防ぐ工事などを進めている。石垣の本格復旧には約354億円、復元建造物のなかで特に大規模な天守、本丸御殿、飯田丸五階櫓(やぐら)を全て建て替えた場合は約210億円が掛かると試算している。

 市は、江戸時代以前から残る国の重要文化財の建造物については、補修して指定の維持を目指す。戦後に復元された建造物については、補修か建て替えか、現時点で未定だ。

 2005年に復元された飯田丸五階櫓は、櫓台の石垣の崩落で倒壊の恐れがあることから、6月16日に倒壊防止緊急工事に本格的に着手した〔図1〕。飯田丸の空き地に片持ち梁の仮設材を据え、先端を櫓の土台部分に回り込ませ、残存している石垣の隅石に荷重が掛からないようにする。施工者は大林組。工期は7月末までで、費用は約8000万円だ。

〔図1〕片持ち梁の仮設材を設置
〔図1〕片持ち梁の仮設材を設置
「一本石垣」(石垣の隅石)が支えている飯田丸五階櫓の倒壊を防ぐ緊急工事のイメージ。片持ち梁の仮設材を設置し、石垣に荷重が掛からないようにする(資料:大林組)
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 熊本城の天守は、大林組が施工した鉄筋コンクリート(RC)造の復元建造物だ。竣工は1960年で、現行の建築基準法に基づく耐震基準に適合していない。被災状況の詳細はまだ分かっていないが、熊本市では今のところ、補修したうえで耐震補強を施すことを目指している。

 天守台の石垣にも崩落などの被害が生じている。市の熊本城総合事務所によると、天守は12本の基礎杭で支えているので、天守台には大きな荷重は掛かっていない。飯田丸五階櫓と異なり、石垣の崩落によって倒壊する恐れは無いと市ではみている。

 市が現在進めている石垣の工事は、崩落した石を撤去して保管し、残存箇所を土のうで押さえるなどして崩壊の進行を止める緊急工事だ。石垣を積み直す本格復旧への着手は来年度以降の見込みで、石垣上の建造物の解体や移設も必要になる。

文化財の復旧に国費を投入

 政府は6月28日の閣議で、16年度補正予算に計上した熊本地震復旧等予備費のうち、熊本城や通潤橋の復旧など計210億円の使途を決定した。熊本地震で被災した文化財の復旧に国費を投入するのは初めて。

 文化庁の所管は15億5300万円で、2割強の3億6000万円を熊本城の応急対策に充当した。内訳は、特別史跡の石垣に2億7100万円、国の重要文化財に指定された櫓に8900万円。