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現行の耐震基準の住宅が倒壊するなど、熊本地震による住宅被害は多くの建築実務者に衝撃を与えた。日経ホームビルダーの調査で、そうした実務者の過半が震災後、住宅の耐震意識を高めている状況が明らかになった。(日経ホームビルダー8月号の記事を再構成した)

 熊本地震による住宅被害を目の当たりにして、設計事務所や工務店などで木造住宅を手掛ける建築実務者は、住宅の耐震性能に対する意識がどう変わったのか。住まい手の意識とずれはあるのか。日経ホームビルダーが実務者246人と住まい手900人の双方に対してアンケート調査を実施した。

〔調査概要〕

日経ホームビルダーが木造住宅の「実務者」と「住まい手」を対象にインターネット上でアンケート調査を実施した

[実務者]調査期間は2016年6月24日~28日。対象は国内に勤務し、木造住宅の建築を手掛けている実務者。回答総数は246人。回答者の勤務先内訳は設計事務所が55.7%、大手ハウスメーカー・住宅会社・工務店が44.3%

[住まい手]調査期間は2016年6月23日~24日。ネオマーケティングに依頼した。調査対象は国内に住む25歳以上で持ち家の木造住宅(2階建て以下)に住む男女。回答総数は900人

実務者の意識変化は顕著

 実務者に、熊本地震で耐震意識がどう変わったかを尋ねたところ、過半となる54.9%が「以前よりも高い耐震性能を想定するようになった」と回答した。住宅の耐震性能に対して従来のままでは不十分だとの危機意識が、実務者の間で高まっているようだ〔図1〕。

〔図1〕実務者は5割強が耐震意識を高める
Q.熊本地震で耐震意識がどう変わったか
<span style="color: red; ">Q.</span>熊本地震で耐震意識がどう変わったか
実務者(有効回答246)
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住まい手(有効回答900)
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 一方の住まい手では、熊本地震をきっかけに、以前よりも高い耐震性能を求めるようになった人が29.0%にとどまった。建築のプロである実務者の耐震意識の高まりが際立つ結果となった。ただし、住まい手もおよそ3人に1人が耐震意識を高めているのだ。住宅の耐震性能に対して無関心だとはいえない。

 こうした耐震意識の前提となる現行の耐震基準について、実務者も住まい手も、実際にはイメージするレベルにバラつきがある。

 建築基準法の耐震基準を満たした住宅が震度6強以上でどうなるかを尋ねた設問で、実務者は最も多い回答でも「大規模半壊する」の3割弱。2割以上が「倒壊・全壊する」と考えている。プロの間でも一致した見解が見られない〔図2〕。

〔図2〕耐震基準のイメージにばらつき
Q.国の耐震基準の住宅は震度6強以上でどうなるか※
<span style="color: red; ">Q.</span>国の耐震基準の住宅は震度6強以上でどうなるか※
※建物が壊れる程度の分類は、内閣府の「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」を参考に作成した。詳細は次の通り。「倒壊」は、住宅が倒れ、押しつぶされる状態。「全壊」は、住宅が居住のための基本的な機能を失って、損壊が甚だしく補修により元通りに再使用することが困難な状態。住宅の損害割合が50%以上。「大規模半壊」は、構造耐力上の主要な部分の補修を含む大規模な補修を行わなければ居住することが困難な状態。住宅の損害割合が40%以上50%未満。「半壊」は、居住のための基本的な機能の一部を失った状態。住宅の損壊が甚だしいが、補修すれば元通りに再使用できる程度。住宅の損害割合が20%以上40%未満
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 住まい手に至っては、「倒壊する」から「ほとんど無傷」まで回答者数がほとんど変わらない。約3分の1が「分からない」状況だ。こうした結果を見る限り、建基法の耐震基準をはっきりとイメージできていない様子がうかがえる。