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今回から、階段や窓などの部位ごとに、住宅とその他建築に分けて寸法を解いていく。独自性がある設計に取り組む建築設計者やデザイナーに、同じ設計者の立場から、浅子佳英氏に寸法の捉え方を聞いてもらう。(日経アーキテクチュア)

 現在、建築は社会の問題として語られることが増える一方で、カタチは語られなくなりつつある。特にプランを読み解く楽しみにあふれた住宅は少ない。そこで、断面と配置が特徴的な設計を手掛け、「現代住宅研究」(INAX出版、塚本由晴氏との共著)でも知られる西沢大良氏(西沢大良建築設計事務所)に聞いた。

数々の住宅見学で寸法を習熟

 「寸法は普通、プロポーションやスケールと混同されているが、寸法自体が我々設計者の強力な武器だ」と西沢氏は言う。寸法を意識するようになったのは、大学時代に住宅を大量に見に行くようになってから。「当時は、雑誌に載っている住宅を探し当て家主にお願いすると大抵、見せてもらうことができた」(西沢氏)

 同級生の塚本由晴氏(アトリエ・ワン)と一緒に、雑誌に出ている配置図や写真だけを頼りに街を歩き回った。「現代住宅研究」で取り上げた住宅も半分ほどは実際に内部を見た。西沢氏は階段についても、実際の体験を通して寸法を身に付けている。

 「いざ小住宅を設計してみると、階段がとにかく大きい。計画学では、機能的にデザインすべきだと教わるが、1日のうちで階段が機能しているのは多くても2時間。残りはオブジェのようなもの」(西沢氏)。ところが、オブジェとしての教育は受けていない。意味あるモノとするには寸法を習熟せざるを得ないと思ったという。