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杭工事の失敗で生じた建物の不同沈下は、杭の施工を担当した下請けと孫請けの専門工事会社に全面的な責任がある──。裁判所がそう断じた判決がある。同様の構図で争う類似裁判にも影響を及ぼしそうだ。(日経アーキテクチュア)

総工事費5億8000万円をかけて完成した幼稚園が、完成からわずか3カ月程度で不同沈下した。元請けJVは杭工事に問題があったとして、杭工事を担当した下請けや孫請け会社に是正費用の全額を請求する裁判を起こした
総工事費5億8000万円をかけて完成した幼稚園が、完成からわずか3カ月程度で不同沈下した。元請けJVは杭工事に問題があったとして、杭工事を担当した下請けや孫請け会社に是正費用の全額を請求する裁判を起こした
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 今回取り上げる判決は、松江市が発注した幼稚園の新築工事を巡る裁判だ。総工事費約5億8000万円のこの幼稚園では、完成からわずか数カ月で不同沈下が発生。元請けである建設会社の共同企業体(元請けJV)は発注者である市から是正を求められ、総工事費並みの約5億円の支出を余儀なくされた。元請けJVは是正工事後の2012年12月、費用の全額負担を求めて、杭工事を担当した下請けや孫請けの専門工事会社を松江地方裁判所へ提訴した。

 松江地裁は16年3月31日、原告である元請けJV側の請求を全面的に認める判決を下し、被告側である下請けおよび孫請け会社に連帯して是正費用などを支払うよう命じた。被告側は杭工事費用の8倍以上に達する賠償責任を負った〔図1〕。

〔図1〕不同沈下の是正に総工事費並みの金額を費やす
2009年 12月 原告のJVが松江市から幼稚園の工事請負契約を締結。総工事費は5億7645万円。鉄筋コンクリート(RC)造2階建てで延べ面積3440m2の建物だった
 10年  3月 JVが下請けの専門工事会社へ杭工事を発注。杭工事費は6143万円だった
下請け会社が孫請けの専門工事会社へ施工を発注
      4月 杭工事が完了
    12月 建物工事が完了、引き渡し
 11年  3月 建物の複数個所で不同沈下が確認される
 12年  5月 発注者の求めによって原告のJVがアンダーピニング工法による是正工事を実施
    12月 原告のJVが下請けと孫請けの専門工事会社を相手取って提訴。是正工事費など5億1300万円を請求
 16年  3月 1審判決。裁判所は原告の請求を全て認めた。被告側は控訴したが、その後和解
事件の経緯。建物を下から底上げするアンダーピニング工法による是正費用がかさんだ(出所:判決文を基に日経アーキテクチュアが作成)