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JR長崎駅と長崎港を結ぶ位置にある長崎魚市跡地に2018年1月、長崎県庁舎が移転、開庁した。港を囲むテラス状の屋上広場では祭りの見物、シティホールでサッカー観戦、展望室で夜景を楽しむなど、2022年の新幹線開通も見据え、観光スポットとしても期待が高まる空間だ。

3階の屋上広場から、長崎港の名所「女神大橋」を望む。2022年に開業予定の新幹線のプラットホームから、女神大橋が見えることが基本構想にうたわれていたため、視界を妨げないよう、庁舎の敷地形状が三角形となった(写真:イクマ サトシ)
3階の屋上広場から、長崎港の名所「女神大橋」を望む。2022年に開業予定の新幹線のプラットホームから、女神大橋が見えることが基本構想にうたわれていたため、視界を妨げないよう、庁舎の敷地形状が三角形となった(写真:イクマ サトシ)
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 「整備基本構想に書かれた『シティホール』という言葉から、市民の集まる場所が必要だと解釈した」。そう語るのは、設計を手掛けた日建設計常務執行役員で設計部門副統括の山梨知彦氏だ。2012年の公開プロポーザルで、長崎市内の2社と組んだ日建設計・松林建築設計事務所・池田設計JVが最優秀に選定された。

連歌のように建物をつなぐ

 プロポーザルの特徴は、設計対象となる行政棟・議会棟の提案とともに、地区全体の基本設計方針を求めたこと。「隣接する駐車場棟や警察本部棟、防災緑地を含め、全体でシティホールとすることを狙った」と、山梨副統括は振り返る。

 そのため、基本構想で18階程度とされていた行政棟を7層に収め、防災拠点として使いやすいよう、歩いて上下移動できる庁舎にした。さらに名所の稲佐山展望台から坂の街が美しく見えるように、「丘のような庁舎」をコンセプトとした〔写真1〕。イベント広場になる防災緑地と、4棟を結ぶ段状の屋外広場が、野外のシティホールとなる構想だ。

〔写真1〕「丘のような庁舎」をコンセプトに空間構成
〔写真1〕「丘のような庁舎」をコンセプトに空間構成
上は行政棟の前から見下ろした防災緑地。緩やかにカーブを描くスロープが駐車場棟の屋上広場まで続き、行政棟の3階に導かれる。行政棟と屋上広場は港側からセットバックしていく構成(下)(写真:イクマ サトシ)
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 長崎県が地区全体の提案を求めたのは、全体としてまとまったデザインにするためだ。県は2000年から「環長崎港地域アーバンデザインシステム」という仕組みを設けており、後に設計者が決まった広場や警察本部棟とのデザイン調整を担った。

 地区の中で設計が先行する庁舎を「発句」として「連歌のような街づくりができた」と山梨副統括は言う。