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2.熊本県の耐震基準

 最近50年の経験では、熊本県に大きな地震は起こっていないように感じる。建築基準法による地域係数は、東京や大阪を1.0として、福岡県、佐賀県、長崎県、鹿児島県が0.8とされている中で、熊本県の大半は0.9と決められ、九州の中では地震危険度の高いところとされている。ただ、この度の熊本地震の本震の観測結果から計算した地震動の破壊力は、1995年兵庫県南部地震と同等であり、実際に起こる地震動の破壊力が東京や大阪に比べて小さいわけではない。大地震の起こる頻度が低いだけである。頻度が低いからといって、相対的に弱い建築を建てても良いのか、疑問が残る。

 カリフォルニア州では断層の領域に建設禁止地域があり、断層の近傍では距離に応じて設計条件を厳しくするnear fault factor (断層近傍係数)を設けている。わが国には認知できていない断層もあり、国土が充分広くないので難しいが、取り入れるべき考えである。

1階が完全に破壊した2階建て木造住宅の左側部分(写真:和田章・東京工業大学名誉教授)
1階が完全に破壊した2階建て木造住宅の左側部分(写真:和田章・東京工業大学名誉教授)
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1階が完全に破壊した2階建て木造アパート建築。4月14日午後9時26分に起きた熊本地震で震度7の揺れを受けた益城町にて(写真:和田章・東京工業大学名誉教授)
1階が完全に破壊した2階建て木造アパート建築。4月14日午後9時26分に起きた熊本地震で震度7の揺れを受けた益城町にて(写真:和田章・東京工業大学名誉教授)
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