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規制に取り組む自治体も

 米国カリフォルニア州には「活断層法」があり、活断層近傍での土地利用規制などが行われている(参考記事:耐震工学の専門家、和田章氏が読み解く建物被害の教訓)。

 対して日本は断層パターンが複雑で、地表面に痕跡が出現していなかったり、未知の活断層がまだ多くあると推察されていたりするため、「ここが危険」と言い切れない難しさがある。国土が狭く、既に活断層の上に市街地が広がっていることも問題を複雑にしている。

 しかし、既知の活断層について、土地利用や建築の規制を講じている自治体もわずかだがある。主な事例を以下に紹介する。

■徳島県

 徳島県は、「徳島県南海トラフ巨大地震等に係る震災に強い社会づくり条例」を2013年4月1日に施行。同8月30日、中央構造線活断層帯(讃岐山脈南縁)において、活断層の調査が必要な区域を「特定活断層調査区域」と指定した。

 特定活断層調査区域内で、特定施設(「多数の人が利用する建築物」および「危険物を貯蔵する施設」)の新築等(新築、改築、移転)を行う場合には、県に届け出なければならない。無届けや未調査、活断層の直上を避けない場合などは、勧告・公表の対象となる。

「徳島県南海トラフ巨大地震等に係る震災に強い社会づくり条例」の土地利用の適正化に関するパンフレット(資料:徳島県)
「徳島県南海トラフ巨大地震等に係る震災に強い社会づくり条例」の土地利用の適正化に関するパンフレット(資料:徳島県)
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■福岡市

 福岡市は、警固(けご)断層帯の南東部に近い一定の区域において、これから新しく建築する中高層建築物の耐震性能を強化するために、福岡市建築基準法施行条例の一部を改正した(2008年10月1日施行)。

 以下の区域について、大地震時における設計地震力を上乗せする。(1)揺れやすさマップで計測震度6.4(震度6強で一番強い震度)が大半(75%以上)を占める区域。(2)警固断層帯南東部直上の区域。(3)土地が高度利用されている区域(容積率600%以上)。

 これらの区域では、高さが20mを超える建築物で構造計算を行う場合は、現在の地域係数(Z=0.8)を、その数値に1.25を乗じたもの(Z=1.0)とするよう努めなければならない 。建築計画概要書には対象建築物であるかどうかを記載し、1.25を乗じた場合はその旨を記載する。

 適合する建築物を新築した場合には、その旨を表す「福岡市優良耐震プレート」を市が交付し、建築物に表示する。

大地震時における設計地震力を上乗せする区域(福岡市建築基準法施行条例第6条の2第1項)(資料:福岡市)
大地震時における設計地震力を上乗せする区域(福岡市建築基準法施行条例第6条の2第1項)(資料:福岡市)
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■神奈川県横須賀市

 横須賀市内には、衣笠断層・北武断層・武山断層の3つの活断層があり、これらの活断層を震源とする地震の発生が危惧されている。市は、大規模な開発を行う際に、土地利用行為者に活断層の調査を行わせ、活断層の位置を特定したうえで、活断層上への建築を制限する地区計画を策定。野比地区地区計画(約15ha)、横須賀リサーチパーク地区地区計画(約59ha)で実施した。

■兵庫県西宮市

 西宮市では、「中高層建築物の建築の届出」において、敷地面積が 500m2以上で、かつ換算戸数が10 以上である建築計画(西宮撓曲(とうきょく)における建築計画を除く)の場合、市が作成した地質活断層図または国土地理院が作成した都市圏活断層図に記載されている活断層線による影響を受けるおそれがあると市長が認める時は、通常の書面および図書に加えて、地質調査報告書を添えなければならない。

 ここで紹介した自治体は、活断層リスクに向き合って地域の特性に応じた規制を課しており、個々の取り組みには苦心の跡がうかがえる。財産権の制限を伴う規制の導入に二の足を踏む自治体は少なくないかもしれないが、居住エリアを誘導するコンパクトシティ化を機に、防災や減災の視点を立地適正化計画に十分に盛り込んでもらいたい。それができれば、活断層による大地震の悲劇が繰り返されるのを少しでも減らせるはずだ。