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 「前震では1階のリビングと寝室のクロスにひび割れが入っただけで、サイディングは何ともなかった。15日は知り合いの家で過ごし、16日の本震後に戻ると、倒壊していた」 

本震後の住宅Aを南西側から見る。これと同じ方向にシミュレーションでも壊れた(写真:日経ホームビルダー)
本震後の住宅Aを南西側から見る。これと同じ方向にシミュレーションでも壊れた(写真:日経ホームビルダー)
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 これは、2010年に完成した熊本県益城町に建つ住宅Aの居住者に聞いた、前震と本震後の様子だ。住宅Aは長期優良住宅の認定を取得するため、壁量を建築基準法の1.25倍とする住宅性能表示制度の耐震等級2(等級2)で設計していた。震度7を記録した熊本地震の本震で倒壊した。

 日経ホームビルダーは2000年基準に沿って建設された住宅が倒壊した原因を探るため、住宅Aを例に取り、専門家の協力を得て倒壊過程をシミュレーションした。 

 シミュレーションには、国土技術政策総合研究所(国総研)の主任研究官を務める中川貴文さんが開発した、ウェブサイトで無料公開されている地震応答解析ソフトの「ウォールスタット」を使用し、益城町で観測された震度7の地震動「KiK-net益城」を入力した。ウォールスタットは国総研のウェブサイトからダウンロードできる。

 作成作業は、エヌ・シー・エヌ(東京都港区)技術開発部主任の小谷竜城さんに依頼した。解析には、居住者の了解を得て入手した住宅Aの設計図書と、インテグラル(つくば市)が設計図書を基に行った許容応力度計算のデータを利用し、準耐力壁は石こうボードだけとした。余力となる外装材のサイディングは入力していない。

 住宅Aの倒壊過程を明らかした動画はこちらだ。33秒ぐらいから本震による大きな動きがみられる。

壁と筋かいの損傷具合の表示方法(資料:日経ホームビルダー)
壁と筋かいの損傷具合の表示方法(資料:日経ホームビルダー)
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耐震等級2の住宅Aが倒壊する過程をシミュレーション(南西側)
耐震等級2の住宅Aが倒壊する過程を三次元でシミュレーションした。動画は南西側から見た様子。33秒ぐらいから本震による大きな揺れがみられる。本震後の倒壊現場と同じ方向に、シミュレーションでも壊れた。益城町で観測されたKiK-net益城の地震動の前震で揺らした後、本震で続けて揺らしている。エヌ・シー・エヌの小谷竜城さんがウォールスタットを使用して作成した(資料:日経ホームビルダー)
耐震等級2の住宅Aが倒壊する過程をシミュレーション(北東側)
こちらの三次元動画は、北東側から見た様子。前震後で揺らした後、本震で続けて揺らしている。本震は最初に地盤が東西方向と上下方向にゆっくり大きく動くのが特徴だ。エヌ・シー・エヌの小谷竜城さんがウォールスタットを使用して作成した(資料:日経ホームビルダー)

 居住者の証言と被災後の現場が示したとおり、前震では自立を保ち本震で倒壊した。詳細は7月号の日経ホームビルダーで紹介している。