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「建築のチカラ」の連載4回目は、竹中工務店大阪本店の総括作業所長である中野達男氏。関西で名を知られる百戦錬磨の名物所長だ。職人を鼓舞することで現場の士気を上げ、予算や工期が厳しくても状況を一変。高品質の建築を実現する。インタビュー全文を3回に分けてお伝えする。

――竹中工務店に入社後の経歴を教えてください。

 入社以来43年間、施工管理ひと筋でやってきました。作業所長になったのは1999年です。「くずはタワーシティ」(2003年)や「香里園駅東地区再開発」(2014年)をはじめ、超高層住宅の施工を数多く手掛けています。2005年に総括作業所長に就きました。

 総括作業所長は、担当地域の中で比較的規模が大きい現場を1つ受け持つのが通常ですが、私の場合はコストが厳しい現場を複数担当しています。これまで多くの現場で苦労してきたので、その経験を生かせということなんでしょうね(笑)。

中野 達男氏(竹中工務店 大阪本店 総括作業所長)(写真:生田 将人)
中野 達男氏(竹中工務店 大阪本店 総括作業所長)(写真:生田 将人)
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――施工現場で大切にしているモットーは何ですか。

 建築現場の原点は、まず職人の技術ありきということです。大手ゼネコンの施工管理者として我々は施工に当たりますが、それを支えているのは職人です。我々がいくら頑張ったところで、最終的な品質は職人の技によって決まります。気持ちよく職人に仕事をしてもらい、品質と安全をつくり込む。これが私のモットーです。

――職人の教育で気を付けていることは?

 学校教育とは違い相手はプロフェッショナルですから、きつく対応せざるを得ないときもあります。でもそのときに愛情を持って接することが大切です。会社の若手にも「100%の愛情のない者は100%で怒るな」と言っています。職人だけではなく、現場所長でも私の部下はいっぱいしかられています(笑)。

――現場の作業環境で気を使っていることはありますか。

 朝礼時、安全の掛け声とともに和太鼓をたたき、気合いを入れながら職人の顔色を見ています。なかには寝ぼけまなこの職人もいますから。私は職人の名前をだいたい覚えていて、名前を呼びながら「調子はどう?」と、背中やヘルメットを軽くたたいて、スキンシップを図ります。総括作業所長という立場の人間が進んでコミュニケーションを取ると職人も喜んでくれます。こうすることで、上と下がつながった風通しのいい現場になると信じています。

作業現場の朝礼で中野総括作業所長が太鼓をたたいて職人を激励している(写真:竹中工務店)
作業現場の朝礼で中野総括作業所長が太鼓をたたいて職人を激励している(写真:竹中工務店)
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 あとは、上棟したときや工程のきりがよいときに焼き肉大会をします。とにかく一番いい肉を用意します。ビールも発泡酒は駄目。一度それを知らないスタッフが発泡酒を用意したので、直前に取りやめたことがあります。なぜそこまでするかというと、職人への敬意をきちんと表したいからです。そうすると気持ちが伝わります。

 日々の関係をきちんと築くことで、職人はわれわれ施工管理者のために働こうと思ってくれます。そういう関係を築くことが大切だと考えています。

――職人との信頼関係が品質につながるということですね。

 そうです。職人に愛を持って接することが、結局は現場の信頼になる。気心が知れている協力会社や職人と仕事をしていると安心感がありますよね。最近、建設現場での数値の改ざんなどが報じられていますが、信頼関係が現場では大切です。それがないと、結局、最後にいいものができないんです。