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写真の印象を聞く機械

 とはいえ、「大手ハウスメーカーの規格型の住宅ではAIによる設計が始まっているけれど、意匠性の高い俺の設計がAIなんかに負けるわけないだろ」という自信はあった。住宅設計の実績が豊富で、建築家として名が売れていた山田。建築の雑誌やテレビ番組で自身の設計物件が紹介されたことも1度や2度ではない。「プライバシーを大切にした空間」の設計には定評があった。

 AIとの初顔合わせとなったのは、建て主から要望や条件を聞く打ち合わせの場だった。顔合わせといっても、相手はタブレット端末を通したクラウドシステムだが。最初の会合では、質問の多くは山田を含む人間の設計者が出した。AI側は、ほぼ質問と回答の音声をマイクで拾うだけ。最後の方に、建てたい建物のイメージと近い写真を尋ねていた。

 それから2週間、「機械に負けたら恥」との思いを抱いていた山田は、いつもよりも多くプランを練り、模型も入念に作った。今ではかなりアナログな設計方法だが、山田の世代では少なからずこのやり方を続けていた。完成したプランを建て主に提示した際には、「結構、いい線いっている」と、山田自身は手応えを感じていた。

 建て主に設計プランを提示してから2週間がたち、プロデュース会社からメールが届いた。「申し訳ございませんが、今回はほかの設計案に決まりました」とある。すぐにプロデュース会社に確認してみると、何と勝ったのはAIだという。しゃくに障った山田は、旧知で同世代の同業者3人に連絡を取り、いつもの居酒屋で一杯やることにした。