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リニアは3大都市圏を一体化

 訪日観光客に限らず、多くの人を魅了しそうなのが、東海道・山陽新幹線の次期車両「N700S」だ。ATC(自動列車制御装置)とブレーキシステムの改良により、地震時のブレーキ距離を短縮したことや、台車振動検知装置の性能向上、駆動システムの小型・軽量化を図ったことが特徴。

 柘植社長は、次世代パワー半導体のSiCを採用した駆動システムについて、共同開発者の東芝、三菱電機、日立製作所、富士電機の名を挙げ、「SiCのおかげで、標準車両が実現した」と説明した。駆動システムが小さくなったことで、床下機器の配置を見直すことができ、16両編成の基本設計を変更せずに、12両や8両など、さまざまな編成に対応可能な「標準車両」を実現した。N700Sは2020年度に導入を予定している。

先進技術を搭載する東海道新幹線の次期車両「N700S」(写真:赤坂 麻実)
先進技術を搭載する東海道新幹線の次期車両「N700S」(写真:赤坂 麻実)
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 講演で、柘植社長はリニア中央新幹線についても時間を割いて紹介した。中央新幹線は、時速500kmで走れる超電導リニア方式を採用し、東京-名古屋間を最速40分で、東京-大阪間を最速67分で結ぶ。東京-名古屋間は2027年、東京-大阪間は2045年をめどに開業する予定だ。

 柘植社長は「東京-名古屋間を開業させた後、経営の体力を回復させて、8年後に名古屋以西の工事に着手する計画だったが、財投債(を原資とした財政投融資)の受け入れを含め、極力短縮できるよう検討していく」とし、東京-大阪間の開業を最大で8年、前倒しする可能性に言及した。

 リニア中央新幹線を整備する意義について、柘植社長は「大動脈の2重系化」と「3大都市圏の一体化」の2つを挙げる。東京-大阪間を結ぶ「大動脈輸送」を担う東海道新幹線が経年劣化していくことに加え、東海道新幹線が南海トラフ巨大地震の際には震度が最大になると想定される地域を通っていることから、中央新幹線開通による2重系化が必要という。

 また、リニア中央新幹線で東京から名古屋まで40分、大阪まで67分で移動できるようになれば、首都圏と中京圏、近畿圏が1つにまとまって、人口6000万人の巨大都市圏として機能するようになると展望。「首都圏の機能を中京・近畿に分散しやすくなるなど、大きな変化が起きる。観光面にも飛躍的な可能性を導き出す」(柘植社長)とした。