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壁と金物が厳格化

 2000年基準以前の新耐震住宅が倒壊するといった不安は、熊本に限らない。1981年以降2000年以前に建てられた木造戸建て住宅であれば、同様に問題が潜んでいる。

 そもそも、2000年基準以前の新耐震は現行の基準に比べてどこに課題があるのだろうか。改めてその改正内容について振り返ろう。

 2000年の建基法の耐震基準に関連する告示で、木造戸建て住宅に大きく関わるのは主に、地耐力に応じた基礎の構造形式の規定(建設省告示1347号)、壁の配置バランスの規定(同1352号)、使用する金物を具体的に指定した木造の継ぎ手および仕口の構造方法(同1460号)の三つだ。なかでも、壁の配置バランスと金物の指定が明確化されたことで、耐震基準がより厳格化された。2000年より前は、金物や壁のバランスに対する意識は、大工などの間に広がりつつあった程度で、情報も曖昧だったようだ。これが耐震性能の差が生じる要因となった。

(資料:日本木造住宅耐震補強事業者協同組合の資料を基に日経ホームビルダーが作成)
(資料:日本木造住宅耐震補強事業者協同組合の資料を基に日経ホームビルダーが作成)
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 例えば、接合部の金物について見てみよう。日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(木耐協)によると、2000年基準以前の新耐震住宅のうち65%が、接合部の施工がくぎ打ち程度の状態(接合部IIIもしくはIV)で耐力が低く、現行の基準を満たしていなかった。2006年4月から2014年12月までの間に同組合員が実施した耐震診断の結果を分析した。

 年代別に比較すると、さらに傾向が分かる。1981年以降の建物は2000年に近付くほど接合部の仕様に山形プレートなどが使われるケースが増え、耐力が強くなっている。それでも現行の基準(接合部I)を満たしていない建物がほとんどだ。

(資料:日本木造住宅耐震補強事業者協同組合の資料を基に日経ホームビルダーが作成)
(資料:日本木造住宅耐震補強事業者協同組合の資料を基に日経ホームビルダーが作成)
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 住宅の耐震性を数値化した耐震診断の評点で比較しても、同様の傾向が見られた。評点は接合部の評価だけでなく、壁のバランスなども評価している。年代別に評点の平均を見ると、金物の傾向と同様に、2000年に近付くほど耐震性は上がる。だが、いずれの年代も現行基準の性能に当たる1.0を下回る評価だ。

 2000年基準以前の新耐震住宅は、1981年の建基法改正で必要壁量が改定されたこともあり、壁量は考慮されている。しかし、配置バランスが規定されていなかったことから、例えば、南に大開口を設け北側に耐力壁をまとめて配置するなど、剛心が偏った建物が少なくなかった。

 震度6強または震度7の地震動が発生した場合、2000年基準以前の新耐震の住宅は倒壊する可能性が高い。国は1981年以前のいわゆる旧耐震住宅の耐震化にまず注力している。だが、2000年基準以前の新耐震住宅も改修を急ぐべきではないだろうか。


熊本地震が突き付けた戸建ての死角。問題がないはずの新耐震住宅が多数倒壊した。被災住宅の現地調査と図面分析から、倒壊の原因と対策を読み解く。

定価:本体2,400円+税。日経ホームビルダー(編)
A5判、約200ページ
ISBN:978-4-8222-0069-5
商品番号:255320
発行日:2016年8月29日
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熊本地震の被害から地震に強い家を再検証しました。一般的には、昭和56年(1981年)の新耐震基準より古い家が地震に弱いと考えられてきましたが、熊本地震では新耐震基準の家も2000年を境に耐震性能に違いがあることが明らかになりました。2000年の告示で追加になった規定や、くぎのめり込みによる強度の低下など、日経ホームビルダーが報じてきた耐震対策の課題を一冊にまとめました。[ 詳細・目次一覧