公共建築物の積算ミスで当初の予定価格の増額を余儀なくされたほか、オープンが遅れたなどとして、秋田県仙北市が指名型プロポーザル方式で決定した設計者を訴えた。秋田地方裁判所大曲支部へ9月21日付で訴状を提出した。相手方の設計者は渡辺佐文建築設計事務所(秋田市)で、市は実施設計料の2倍以上となる2233万円の損害賠償を求めている。設計者は争う構えだ。
積算ミスがあったと市が主張しているのは7月1日にオープンしたばかりの「田沢湖クニマス未来館」。1940年代に絶滅したとされていた淡水魚のクニマスが、山梨県の富士五湖で生息確認されたことを受けて、市が本来の生息地である田沢湖の湖畔に整備した展示施設だ。
設計者が納品した当初の実施設計図書は、工事費予定額を約2億3000万円と見積もっていた。市はこの金額を前提に市議会の承認を得て、建築工事の一般競争入札を16年6月に公告した。
だが市によると、建設会社からの質疑により、積算ミスが多額に上る可能性が浮上した。市は実施前日に入札を中止。設計者に対し、質疑による指摘などを反映した実施設計図書の再納品を求めた。この結果、予定額が2億7180万円に膨れ上がることが判明した。
市と設計者はその後、延べ面積を縮小したり、トイレの数やホールの常設席数を減らしたりして、予定額を2億5218 万円とする最終案をまとめた。それでも最初の予定額を約2000万円超過した格好だ。市議会は着工に際し、予算の増額補正案を承認したが、それは設計者への損害賠償請求が条件だった。