建築基準法の改正に向けた議論が始まった。国土交通省は、10月6日に開催した社会資本整備審議会建築分科会(分科会長:深尾精一・首都大学東京名誉教授)で議論の方向性を示した。主な論点は「既存ストック活用」「木造建築を巡る多様なニーズへの対応」「適切な維持管理・更新による建築物の安全性確保」の3点だ。2018年3月までに答申をとりまとめる予定で、早ければ18年の通常国会に改正案を提出する。
規制緩和で用途変更しやすく
既存ストックの利活用を促進する主な狙いは、老人ホームや保育施設などへの用途変更をしやすくすることだ。増加する空き家などを有効活用するため、建基法の単体規定および集団規定の合理化などの措置を議論する。
国交省が全国の特定行政庁を対象に実施した15年度の用途変更実績調査によると、老人ホームや児童福祉施設などへの用途変更が38%を占めた。来る超高齢化社会に向けては、さらに老人向け福祉施設の需要が増加する見通しだ。国交省は、戸建て住宅から老人ホームへ用途変更するケースなど、遡及のための改修工事の負担や、容積率算定時の条件の違いが既存ストック利活用の障害になるとの現状認識を示した。
さらに、集団規定の具体的課題として、法第43条(敷地などと道路との関係)や法第48条(用途地域など)のただし書き許可の許可書交付までに要する日数の長さを挙げた。
このほか、東京五輪で建築される仮設建築物や工作物が1年以上存続する可能性があり、柔軟な対応を検討する。大規模災害に備え、一時的な用途変更によって仮設住宅を迅速に供給するための仕組みについても議論する。
木造建築を巡る多様なニーズへの対応としては、防火・避難規定の合理化などによる安全性とデザイン性が両立を目指す。国交省はこれまで、公共建築物等木材利用促進法の制定や建基法の改正によって、木質材料の利用促進を進めてきた。現法規に従って木造建築物の木材を被覆して防火性能を確保すると、木の良さを活かしたデザインとならないことが課題だと説明した。