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喫茶「プランタン」とのつながりは?

 地下1階の金庫室も見せてもらった。金庫室は今は使用していないが、ドラマに使えそうなほどピカピカだ。この建物がいかに大事に使われているかが分かる。

金庫室(写真:日経アーキテクチュア)
金庫室(写真:日経アーキテクチュア)
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 ほかの見学者の皆さんはこの金庫室に大いに盛り上がっていた。だが、筆者はむしろ、その入り口手前の階段の手すりに心を奪われた。

地下1階の階段手すり(写真:日経アーキテクチュア)
地下1階の階段手すり(写真:日経アーキテクチュア)
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 そして、階段の下に無造作に置かれた籐製の物体に気付いた。

籐製のこの物体は?(写真:日経アーキテクチュア)
籐製のこの物体は?(写真:日経アーキテクチュア)
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 張り紙があるので「何だろう」と見てみると、「これは村野藤吾デザイン、喫茶プランタンで使われていた階段の手すりです」と書かれている。

説明の張り紙(写真:日経アーキテクチュア)
説明の張り紙(写真:日経アーキテクチュア)
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 村野ツウであればご存じだろう。村野の設計で1956年に開店した「心斎橋プランタン」だ。吹き抜けを貫くらせん階段の手すり壁を、この店が閉じることになったときに保管しておいたのだという。

 筆者は全く知らなかったが、心斎橋プランタンは浪花組が発注し、運営していたのだ。同じく村野設計による戎橋プランタンもやはり浪花組のものだった。村野に依頼したのは浪花組第三代社長・中川貢氏。いずれも閉店して、今はない。ちなみに浪花組社長の自邸(中川邸)も村野の設計であるという。

 30分ほどで建物内の見学が終わり、解散となった。外まで見送ってくれた社員の方に、ずっと気になっていたことを聞いてみた。「あの外壁の黒い部分は平瓦を張っているんですか?」

外壁見上げ(写真:日経アーキテクチュア)
外壁見上げ(写真:日経アーキテクチュア)
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 社員の方はえっ?と何のことか分からない様子。「ほらあそこですよ」と指を指すと、「ああ、あれは黒モルタルを左官で仕上げたんです」と予期せぬ答え。

ぱっと見には平瓦に思えるが左官仕上げ(写真:日経アーキテクチュア)
ぱっと見には平瓦に思えるが左官仕上げ(写真:日経アーキテクチュア)
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 おそらく村野は浪花組の左官の技術力を示すために、瓦風の左官で外壁を仕上げたのであろう。それも「すごいでしょう」と誇示するのではなく、誰もそれと気付かないほど完璧に……。おそるべし村野藤吾。

 インターネットではなかなか分からない多くの発見があった浪花組見学会。今年もイケフェスを存分に楽しんだ1日だった。