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 建設業の労働災害による死亡者数は、かつて年間2000人を超えていました。それが、設備の充実や安全意識の高まりで減り続け、2013年には過去最少の342人まで減少しました。しかし、14年は377人と再び増加。一度に3人以上が業務上死傷または罹病(りびょう)した災害である「重大災害」も、14年には前年比で4割も増えました。

 死亡災害にまで至らなくても、建設業では相変わらず事故が多発しています。原因やメカニズムは様々ですが、意外に目につくのは、「なぜ防げなかったのだろうか」と思えるような事故。後から原因を究明してみると、明らかに無理のある計画で施工していたケースが多々あります。

 日経コンストラクション4月11日号では、そうした「本来なら防げたはずの事故」に焦点を当て、特集「施工計画の失敗」を企画しました。実際の事故の事例を取材し、そこから得られる教訓をまとめました。

日経コンストラクション2016年4月11日号特集「施工計画の失敗」から
日経コンストラクション2016年4月11日号特集「施工計画の失敗」から
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 特集の冒頭で取り上げたのは、千葉県の国道410号・松丘隧道での吹き付けモルタル崩落事故です。トンネル内をPCL(プレキャスト・コンクリート・ライニング)工法で補修する工事で、内壁の既存モルタルを撤去してから10cm厚でモルタルを吹き付け、その後、プレキャストコンクリート版(PCL版)を設置するという手順で行います。吹き付けを終えてからPCL版を設置するまでの間に、モルタルが長さ20m、幅5mにわたって剥がれ落ちました。

 原因は単純でした。モルタルを吹き付けた後、施工者は下半の足元部分のモルタルを撤去していたのです。下半部分に側壁を打設するための措置ですが、側壁ができるまでの間はアーチアクションを期待できず、モルタルは地山との付着力だけで持っていた状態でした。アンカーを打つなどの対策も取っていなかったため、剥落してしまったわけです。

 事故原因の究明に当たった「松丘隧道補修工事検討会」で委員長を務めた首都大学東京の西村和夫教授は、こう話しています。「専門家が見れば、落ちる落ちない以前に、危ないと思うだろう。何か対策をした方がいいのではないかと感じるはずだ」――。

 このコメントに尽きるのだと思います。今回の特集ではこの事例を含め、危険に対する想像力が働いていれば防げたはずの事故をいくつか取り上げました。他現場での事故を教訓に、皆さんの現場の危険についても改めて考えていただければと思います。