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 第7回の座談会に登場するのは、石田哲也・東京大学大学院工学系研究科教授(聞き手)と佐藤和徳・日本大学工学部教授(元国土交通省東北地方整備局地方事業評価管理官)の2人。

土木学会の「コンクリート構造物の品質・耐久性確保マネジメント研究小委員会」(229委員会)が5月8日に実施した座談会の様子(写真:横浜国立大学)
土木学会の「コンクリート構造物の品質・耐久性確保マネジメント研究小委員会」(229委員会)が5月8日に実施した座談会の様子(写真:横浜国立大学)
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石田:後半戦は、耐久性をメーンに議論できればと思います。前半の部の冒頭に河野先生がおっしゃった車の話がありましたが、佐藤さんは「2000ccの車では東北の坂道は登れない」、「4人乗りの車では5人家族は乗れない」、という比喩をよく使われます。そもそもの性能をアップしないと、耐久性確保ができないというところのお話を最初にいただきたいと思います。

佐藤:東北地方の復興道路では床版の高耐久化を4橋でやりました。しかし、その後はなかなか続きません。その理由をまずお話ししたいと思います。発注者には全員というわけではないのですが、ある一定の傾向があります。公務員ですから、基準や法律を守るのは非常に大きな仕事です。基準が万能でないにもかかわらず、基準に記載のないことはしたがらないのです。

 設計・施工基準でいうと、地方部局にいれば基準は与えられるもので、自分で作ったり修正したりするものではないと考えている。後は組織としての教育がそうなっているからですが、コスト意識が非常に高く、多少性能を落としても安い方が良いという文化です。コストアップに対してはほとんどが「NO」と判断するような大きな抵抗感を持っています。

 また、監督・検査基準などに記載してあるものを履行確認することが仕事だと思っているので、基準にないこと、新しいことにはほとんど着手しません。仕事に精一杯で、新しいことに対して検討する時間が無いこともあると思います。

 仮に熱意があって新しいことに挑戦しようとした時でも、組織内部の人間が新しいことにはアレルギーがあるので、上司に説明して説得するのがものすごい労力になってしまい、ボトムアップではほとんど実現しません。

 これは当面の仕事に追われていることもありますし、建設部門は建設部門の仕事をするので精一杯なので、管理部門がどんなに困っていようが興味もないし、知る気もないような状態になっているはずです。

 東北で耐久性確保が進まないのは、建設部門では橋梁でいえば示方書通りに造っていれば十分だと思っているからです。ですが、現実は示方書が十分には想定していない凍結防止剤の大量散布によって凍害や塩害、ASR(アルカリシリカ反応)が促進され、新しい劣化形態である床版の砂利化が発生しています。それらの情報は建設部門には入ってきません。劣化の実態が認識されていないので、示方書通り造って劣化するのです。