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首都高上に「一夜ベント」

 水管橋の架け替え範囲は、長さ80mの1径間。この下には羽田線のほか東京モノレールも行き来しているので、支保工などを仮設できる場所は限られる。

 撤去はアーチを橋軸方向に6ブロックに切断し、クレーンを使ってブロックごとに地上へ吊り下ろす方法を採用した。アーチをブロック分けして、撤去するのは珍しい。アーチ1径間全体の総重量は179.5tなのに対し、1ブロックの重量を最大43.8tに制限。京浜運河上に設けた仮設桟橋から400t吊りクレーンで吊り上げられるようにした。

 ブロックの切断箇所は、真下を車やモノレールが通らない場所を選んだ。16年10月24日夜から翌25日未明にかけて、羽田線を通行止めにしたうえで、羽田線とモノレールの直上を含むアーチ支間中央の3ブロックを撤去した。

■ アーチの撤去手順(2016年10月24日夜~25日未明)
アーチの軸力をエレクションピースで受け替え、部材を切断(資料:首都高速道路の資料をもとに日経コンストラクションが作成)
アーチの軸力をエレクションピースで受け替え、部材を切断(資料:首都高速道路の資料をもとに日経コンストラクションが作成)
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交通規制が完了した道路上に一夜ベントをクレーンで仮設する(資料:首都高速道路の資料をもとに日経コンストラクションが作成)
交通規制が完了した道路上に一夜ベントをクレーンで仮設する(資料:首都高速道路の資料をもとに日経コンストラクションが作成)
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モノレール運行終了後、C・D・Eの3ブロックを玉掛け。アーチを5カ所でジャッキアップし、アーチの軸力を下げる。BC間・CD間・DE間・EF間のエレクションピースを外す(資料:首都高速道路の資料をもとに日経コンストラクションが作成)
モノレール運行終了後、C・D・Eの3ブロックを玉掛け。アーチを5カ所でジャッキアップし、アーチの軸力を下げる。BC間・CD間・DE間・EF間のエレクションピースを外す(資料:首都高速道路の資料をもとに日経コンストラクションが作成)
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E・D・Cの順にブロックを一括撤去(資料:首都高速道路の資料をもとに日経コンストラクションが作成)
E・D・Cの順にブロックを一括撤去(資料:首都高速道路の資料をもとに日経コンストラクションが作成)
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一夜ベントを撤去し、交通開放する。A・B・Fの3ブロックは後日、日中に一括撤去する(資料:首都高速道路の資料をもとに日経コンストラクションが作成)
一夜ベントを撤去し、交通開放する。A・B・Fの3ブロックは後日、日中に一括撤去する(資料:首都高速道路の資料をもとに日経コンストラクションが作成)
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切断箇所に取り付けたエレクションピースとジャッキ。写真は補剛桁で、切断面をジャッキで引き寄せられるようにした(写真:首都高速道路会社)
切断箇所に取り付けたエレクションピースとジャッキ。写真は補剛桁で、切断面をジャッキで引き寄せられるようにした(写真:首都高速道路会社)
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 ブロックの撤去に先駆けて、アーチリブや補剛桁は事前にガス切断した。ただし、アーチとしての構造は保つ必要がある。そのため、各切断箇所に部材同士を仮固定するエレクションピースを設置。切断後も軸力を仮受けできるようにした。

 アーチ撤去の際に厄介になるのがこの軸力だ。軸力が作用していると、ボルト締めしたエレクションピースが取り外せない。そこで、軸力を低下させるため、アーチの補剛桁を5カ所からジャッキアップした。

 うち1カ所は羽田線の道路上だ。羽田線を通行止めにした後、隣接する工事ヤードから自走式の多軸台車を道路上にクレーンで吊り込み、その上に支保工を載せた。多軸台車をアーチの下へ滑り込ませ、最大52.2tをジャッキアップして支える「一夜ベント」とした。

首都高羽田線の下り線上に設置された「一夜ベント」。モノレール直上で作業できるのは、午前1時から午前3時半までに限られる。10月24日午後11時45分撮影(写真:大村 拓也)
首都高羽田線の下り線上に設置された「一夜ベント」。モノレール直上で作業できるのは、午前1時から午前3時半までに限られる。10月24日午後11時45分撮影(写真:大村 拓也)
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 各切断箇所には、部材と部材の間を広げる、または縮めるようにしてエレクションピースにかかる軸力を受け替えられるジャッキも取り付けた。「事前の解析結果をもとに、全てのジャッキ圧を集中管理した。それでも部材同士がせり出して、最初のブロックをなかなか吊り出せなかった」と、JV鋼橋工事グループの小玉芳文プロジェクトマネージャーは振り返る。一部の仮設材はその場で切断する必要があった。

 実際、エレクションピースの取り外しを始めた午前1時すぎから最初のブロックを吊り上げるまでに、2時間弱を要した。午前3時半までに東京モノレール上空のブロックを撤去することが施工の条件。作業時間は許容範囲内に収まったものの、計画よりも30分以上遅れた。