緑化を可能にしたCSG

 津波に対して粘り強い構造を獲得するための代表的な工夫は、陸側の法尻部分の補強です。例えば、法留めと法面の構造を連続化したり、法尻付近に地盤改良を施したりして、大きな力に対する抵抗力を高めました。

 ほかにも、陸側法面に用いるコンクリートブロックにかみ合わせ構造を組み込む手法や天端コンクリートと法肩部を一体化してブロックが流失しにくくなるような手法を講じました。天端コンクリート部には空気や水を抜くための孔を設置。堤防が水没した際の浮き上がりを防ぎます。

粘り強い海岸堤防の構造。国土交通省東北地方整備局と国土技術政策総合研究所の資料をもとに日経コンストラクションが作成
粘り強い海岸堤防の構造。国土交通省東北地方整備局と国土技術政策総合研究所の資料をもとに日経コンストラクションが作成
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 津波に対する粘り強い構造では、緑化を活用するという知恵も出てきています。浜松市内で民間企業からの寄付金を受けて進む防潮堤の整備事業は、その先例の一つです。

 この防潮堤は、現場近くで入手できる砂れきにセメントや水を混ぜてつくるCSG材で堤体を構築し、その前後を盛り土で覆う構造を採用しました。設計強度の管理がしやすく津波への抵抗力の把握が容易なCSGの採用では、構造体をコンパクトに構築できる点という利点があります。

 この構造を採用すると、構造体の前面や背面への盛り土や覆土ができるので、緑化が可能となります。浜松の防潮堤では、海岸沿いに保安林が存在し、これが背後地への砂の飛散や強風対策に役立っていたこともあり、防潮堤整備後の保安林の再生を考慮したのです。

 緑化の効果は、防風や防砂といった日常的な機能にとどまりません。緑化によって、津波襲来時に堤防の粘り強さを期待できると見込まれています。

浜松市内に整備する防潮堤で計画する植栽の案(資料:静岡県)
浜松市内に整備する防潮堤で計画する植栽の案(資料:静岡県)
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 浜松だけでなく、前述の仙台湾南部海岸でも、一部の区間で緑の防潮堤を整備しています。岩沼海岸では試験的に、コナラやヤマザクラといった落葉樹を含めた植樹を堤防背面の盛り土に施しています。

 堤防と一体的に整備した植栽に粘り強さなどを見込む「緑の防潮堤」は、今後も広がる見通しです。改正海岸法が14年8月に施行され、緑の防潮堤が海岸保全施設として位置付けられたためです。