河川にも広がる

 粘り強い構造は、津波に備えた防波堤や海岸堤防以外にも領域を広げつつあります。その一例が河川堤防です。15年9月襲来した関東・東北豪雨がもたらした、鬼怒川での大規模な浸水被害などを機に、そのあり方が見直され始めています。

 国交省は20年度までの約5年間に、延長約1800kmの区間に概算で約2000億円を投じて、河川堤防を粘り強い構造に変革する方針を掲げています。氾濫リスクが高いものの、当面は本格的な堤防整備といった対策が難しい区間が対象となります。構造などの詳細な内容は検討段階にありますが、国交省が緊急的に整備を図る粘り強い河川堤防のイメージは次のようなものです。

 まずは天端の保護。堤防の天端にアスファルト舗装などを施して、大雨によって生じた越水時に堤体の法肩の浸食・崩壊などを遅らせます。さらに、陸側の法尻部分にはブロックなどを配して保護し、越水した水によって進行する深掘れを遅らせるようにします。

 こうした河川での対策に一定の効果が見込めることは、過去の洪水被害から定性的に導き出せます。例えば、愛知県内を流れる八田川の堤防では、2011年に生じた越水時に、天端の舗装などが施されていたことが、堤防の決壊を防いだとみられています。

2011年9月の出水で越水した庄内川水系八田川の堤防の断面。越水によって堤防が侵食されたものの、決壊は免れた。天端に舗装があるなどした点が影響したとみられる。社会資本整備審議会の大規模氾濫に対する減災のための治水対策検討小委員会の会合で示された資料から抜粋
2011年9月の出水で越水した庄内川水系八田川の堤防の断面。越水によって堤防が侵食されたものの、決壊は免れた。天端に舗装があるなどした点が影響したとみられる。社会資本整備審議会の大規模氾濫に対する減災のための治水対策検討小委員会の会合で示された資料から抜粋
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 こんなふうに記すと、河川堤防における粘り強い構造というのは、さも新しい知見のように見えるかもしれません。しかし、そうではありません。天端の舗装や法尻の保護などによって、「越水しても急激には破堤しない」堤防を構築する考え方は、国の整備方針として過去に示されていた時期があったからです。