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 久富産業(福井市)が耐震部材の溶接で手抜きをしていた問題で、国土交通省は10月7日、同社製の部材を使って補強工事を実施した98橋で溶接不良が見つかったと発表した。検査の終わっていない橋がまだ多数あり、溶接不良箇所はさらに増える可能性がある。国交省は今後、補強工事を手掛けた元請け会社に補修を求める。

久富産業製の耐震部材を使用した橋の検査状況
久富産業製の耐震部材を使用した橋の検査状況
(資料:国土交通省)
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 久富産業が、完全溶け込み溶接の際に「裏はつり」という工程を意図的に省略したことで不良が発生したとみられる。品質を証明する「第三者」として、同社が検査を委託していた北陸溶接検査事務所(福井市)も、溶接不良隠しに加担していた疑いがある。

約半数をショーボンド建設が施工

 国交省は9月11日に、各地方整備局と高速道路会社が過去5年間に耐震補強・補修工事を実施した橋のうち、久富産業の溶け込み溶接製品を使用していた橋が92橋あることを公表している。これらの橋で溶接部の健全性を検査したところ、その約8割の72橋で不良品が見つかった。そのうち37橋は、ショーボンド建設が補強工事を手掛けている。

 国交省は、6年以上前に久富産業製の部材を使った橋でも調査を進めている。10月5日時点で、国交省管理の114橋と高速道路会社管理の8橋の計122橋で、同社製部材を使っていたことが判明。それらの一部で検査を実施し、既に26橋で溶接不良が見つかっている。

 自治体なども調査を始めており、56団体の199橋で同社製の部材を使用したことが分かっている。これらの橋でも順次、検査を実施している。

久富産業製以外でも不良品

 国交省では、久富産業以外の会社が製造した耐震部材を使った橋でも、調査を進めている。耐震補強工事を実施した橋の中から調査対象を選び、補強工事の施工者に検査を依頼。施工者の負担で超音波探傷試験を実施している。

 その結果、中部地方整備局が管理する久能高架橋(静岡県袋井市)で、溶接不良が見つかった。この橋では14年3月から15年3月にかけて、八十八工業(静岡市)製の部材を使って補強工事を実施した。施工者の中村建設(浜松市)が検査したところ、366部材のうち約8割に当たる291部材で溶接不良が判明した。久富産業と同様の手抜きがあったのかどうかなど、不良が生じた原因について施工者がヒアリングを進めている。

落橋防止装置などに溶接不良が見つかった久能高架橋(写真:国土交通省中部地方整備局)
落橋防止装置などに溶接不良が見つかった久能高架橋(写真:国土交通省中部地方整備局)
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強度試験では問題なし

 溶接不良問題の広がりを受け、国交省は有識者委員会(委員長・森猛・法政大学教授)を立ち上げ、10月13日に第1回会合を開いた。

 この会合で国交省は、溶接不良のあった部材の強度試験の結果を報告した。溶接不良の部材4組と適正な部材3組で引張試験を実施したところ、引張強度は不良部材が488.3~497.7N/mm2、適正部材が493.0~497.0N/mm2で、全て規格値を満たしていた。破断箇所はいずれも母材だった。ただし委員会では、条件によってはこれより小さな強度しか出ない可能性もあるとしている。

 久富産業のケースでは、検査会社が不正に加担した可能性が指摘されていることから、委員会は今後、検査体制の在り方などを検討する。年内に報告書をまとめる予定だ。