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車の利用データを駆使した賢いインフラ投資の時代が幕を開ける
道路利用者から得られる大量のデータ(ビッグデータ)から道路の課題などを見つけ出して、限られた予算を高い投資効果の見込める部分に賢く使う──。そんな道路整備の進め方が、2016年度以降に大きく進展しそうだ。
国土交通省はETC2.0と呼ぶシステムから得られるデータを利用したインフラの維持管理や改修といった施策を強化する。ETC2.0は、カーナビと車載器を車に搭載して、全国の高速道路上約1600カ所に設けた通信スポットと双方向にデータをやり取りするシステムだ。
車載の機器との通信を通じて、速度データや移動経路、時間情報などを取得できる。こうしたデータを分析して、効果的なインフラ投資に結び付ける。例えば、大量の車の移動履歴を分析して、渋滞が発生しやすい箇所を把握。車線数といった見た目では渋滞予想が難しい箇所をあぶり出して対策を講じる(図1)。まずは首都圏で東京オリンピックを見据えた対策を講じていく方針だ。
物流や安全対策に利用
データを用いた安全対策も注力分野の一つ。主に生活道路の質の改善を視野に入れる。急ブレーキが多発している箇所や速度の大きい車が数多く通る抜け道などを大量のデータから割り出して、安全対策を講じる。
2016年度からの5年間で、事故による歩行者と自転車利用者の死者数を半減させる目標を立てた。植栽のせん定やハンプの設置といった対策が、代表的な手法になる見込みだ。
ETC2.0のデータは、物流においても活用する方針だ。トラックなどに装備したシステムを使い、その位置や移動経路などを事業者が把握できるようにして、正確な積み荷の到着時刻の把握などに役立てる。ほかにも、急ブレーキや急ハンドルといった運転履歴をもとに、トラックの運転手に対する安全指導にも展開できるシステムの構築を狙う。
自動車の利用データを用いて安全対策に役立てる取り組みは、既に一部の自治体が取り入れ始めている。千葉県柏市はオリエンタルコンサルタンツと共同で、公用車に取り付けたドライブレコーダーの情報をもとに職員の運転指導や道路の危険箇所を確認するシステムの実証試験を実施中だ。16年3月まで継続する。