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コンクリートの手引を作成

 東北地方の構造物は、新区界トンネルで特に配慮した凍害のほか、凍結抑制剤による塩害、アルカリシリカ反応などの複合劣化が生じやすい環境下にある。

潮流24 耐久性確保に向け構造設計に注目

橋の水仕舞いなどに配慮

  • ・東北地整ではPC橋のエポキシ樹脂塗装鉄筋を標準仕様に
  • ・東北地整は14年10月に、地覆や壁高欄などの水仕舞い構造の工夫を盛り込んだ手引を改訂

 厳しい環境作用を考慮して設計で高耐久化を図る動きでは、橋梁が先行している。東北地整は14年度から、工場製作のプレストレスト・コンクリート(PC)桁で、荷下ろし時の空気量6%やエポキシ樹脂塗装鉄筋を標準仕様にした。

 鋼橋でも同様の対応が進む。15年10月には、耐候性鋼材の桁端部は金属溶射とフッ素樹脂塗装を標準とすることを通達。そのほか、水仕舞い構造を工夫する設計で鋼材の腐食抑制を狙った「排水計画の手引」も作成した。

潮流25 強度至上主義からの脱却

長期養生で表層の密実性向上

  • ・東北地整は13年度、坑口から100m区間は1週間養生するよう事務通達
  • ・共通仕様書に定める養生期間以外に、追加養生を推奨

 東北地整では表層品質にもこだわりをみせる。従来のように、コンクリートの強度だけでなく、表層の密実性も耐久性に関係することが分かってきたためだ。特に先述した複合劣化の抑制には、コンクリート内への水の浸透防止が欠かせない。

 対策の肝となるのが養生だ。東北地整道路部道路工事課の遠藤雅司建設専門官は、「養生期間を延ばすと密実性の高い構造物になることが、透気試験や吸水試験で証明されてきた」と話す。

 同地整は13年度、明かり部の凍結抑制剤が車で巻き上げられやすいトンネル坑口部の脱型期間を、1週間に延長した。施工者も理解を示しており、積極的に養生対策を提案している(写真4)。民間の知見や養生時の留意事項などは、15年12月公表の「コンクリート構造物の品質確保の手引」に盛り込んだ。

写真4■ 上は新区界トンネル。坑口100m区間は、コンクリートの空気量を増やしただけでなく、打設後に養生シートを張って緻密化を図っている。右の橋梁下部工事の現場では、農業用のビニールシートを養生に使用した。コストや施工手間を掛けずに、表層の緻密性を大きく向上させた例の一つ(写真:日経コンストラクション)
写真4■ 上は新区界トンネル。坑口100m区間は、コンクリートの空気量を増やしただけでなく、打設後に養生シートを張って緻密化を図っている。右の橋梁下部工事の現場では、農業用のビニールシートを養生に使用した。コストや施工手間を掛けずに、表層の緻密性を大きく向上させた例の一つ(写真:日経コンストラクション)
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