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ロッキング橋脚ダム再開発タイムラインプッシュ型配信

 自然災害の激甚化を受け、2017年は震災・豪雨災害の教訓を踏まえた対策が、ハード・ソフトの両面から急ピッチで進みそうだ。

 今後、首都直下地震や南海トラフ巨大地震など、大地震の発生が確実視されている。政府の地震調査研究推進本部が16年6月に発表した全国地震動予測地図によれば、主に関東地方から西日本にかけての太平洋側において、今後30年間で震度6弱以上の揺れに見舞われる確率が上昇している。構造物の耐震化は喫緊の課題だ。

ロッキング橋脚橋を3年で補強

 国は、緊急輸送道路での橋梁耐震化を進めているが、進捗率は16年10月時点で76%。16年4月の熊本地震では、熊本・大分県内で震度6弱以上を観測した地域の緊急輸送道路の中で、速やかに機能を回復できなかった橋が12橋あった。

 こうした被害を踏まえ、橋梁耐震化の動きが加速する。16年11月に開催した社会資本整備審議会道路分科会基本政策部会の会合で、緊急輸送道の中でも特に高速道路と直轄国道の橋の耐震補強を優先的に実施することを明らかにした(図1)。

図1 ■ 橋梁耐震化率の新たな目標値
図1 ■ 橋梁耐震化率の新たな目標値
*の数値は2015年9月に決定した社会資本整備重点計画の目標値。国土交通省の資料をもとに日経コンストラクションが作成
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 さらに、「ロッキング橋脚」を持つ橋の対策も急ぐ。熊本地震では、九州自動車道に架かるロッキング橋脚形式の跨道橋「府領第一橋」が高速道路上に崩落した。ロッキング橋脚は、柱の上下にピボット支承を配した構造で、橋脚は軸力だけを負担する仕組みだ。単独では自立できない構造なので、地震時の危険性が指摘されてきた(写真1)。

写真1■ 熊本地震で落橋した府領第一橋。九州自動車道をまたぐ跨道橋で、橋脚はロッキング形式だった(写真:日経コンストラクション)
写真1■ 熊本地震で落橋した府領第一橋。九州自動車道をまたぐ跨道橋で、橋脚はロッキング形式だった(写真:日経コンストラクション)
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 そこで、高速道路、直轄国道とそれらをまたぐ約450橋のロッキング橋脚橋を対象に、構造の変更などを含めた耐震補強を3年程度で終える方針を掲げた。

水防法改正で想定浸水深が大きく

 地震だけでなく、水災害のリスクも高まっている。16年8月には、台風10号が統計開始以降初めて東北地方太平洋側に直接上陸して大きな被害を出すという、これまでにないパターンの災害も生じた。

 15年7月に改正された水防法には、「想定し得る最大規模の降雨」への対応が盛り込まれた。これを踏まえて国土交通省は浸水想定を見直し、各地方整備局が16年6月までに新たな洪水浸水想定区域図を公表。多くの地域で、従来より想定浸水深が大きくなった(図2)。

図2 ■ 荒川水系荒川の洪水浸水想定区域図。水防法改正を受けた被害想定の見直しによって、浸水深が見直し前の約3倍になった地点もある(資料:国土交通省)
図2 ■ 荒川水系荒川の洪水浸水想定区域図。水防法改正を受けた被害想定の見直しによって、浸水深が見直し前の約3倍になった地点もある(資料:国土交通省)
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 リスクが高まる豪雨災害に備え、今年は様々な対策が本格化する。ハード面で注目を集めているのがダム再開発だ。堤体のかさ上げや放流管の新設といった既存ダムの改良によって、洪水調節容量を増やす(写真2)。そのほか、15年9月の関東・東北豪雨の被害を受けて、直轄河川の延長約3000kmを対象に、国交省は堤防の整備や強化を進めている。約8000億円を投じて、20年度までに集中的に取り組む。

写真2■ 再開発工事中の長安口ダム。洪水吐きの増設によってダムの放流能力を高めるとともに、予備放流水位を1m下げて洪水調節容量を増やす(写真:大村 拓也)
写真2■ 再開発工事中の長安口ダム。洪水吐きの増設によってダムの放流能力を高めるとともに、予備放流水位を1m下げて洪水調節容量を増やす(写真:大村 拓也)
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避難促す対策のメニューが豊富に

 避難誘導や災害情報の発信といったソフト面の対策も、メニューが出そろってきた。なかでも今年、各地に広がりそうなのがタイムライン(防災行動計画)の作成だ。タイムラインとは、台風接近などの数日前から、自治体や鉄道会社といった関係機関がどのような行動を取るかを時系列で定めた計画を指す。関東・東北豪雨の際、避難勧告の発令に効果を発揮したことが確認され、注目が高まっている。

 国交省は15年12月に公表した「水防災意識社会再構築ビジョン」で、20年度までに730市町村でタイムラインを作成するとし、16年7月までに570市区町村が作成を終えている。同年8月には「タイムライン(防災行動計画)策定・活用指針(初版)」を公表し、未作成の自治体に整備を促す。

 災害情報の発信でも新たな試みが始まっている。国交省は、国が管理する河川の洪水情報を流域住民の携帯電話やスマートフォンにメールで一斉配信する「プッシュ型配信」と呼ぶ情報発信の取り組みを始めた。情報を強制的に届けることで、住民の自主的な避難を促す。

 まずは16年9月、茨城県常総市の鬼怒川と愛媛県大洲市の肱川(ひじかわ)を対象に実験。配信エリアを順次拡大し、20年度までに全109水系の直轄河川で導入する予定だ。