微生物を利用してひび割れの自己修復を可能にした革新的な材料がオランダから日本に上陸した。會澤高圧コンクリート(北海道苫小牧市)が、同技術の権利を持つベンチャー企業、バジリスク・コントラクティングと日本国内での独占販売契約を結んだ。開発者であるオランダ・デルフト工科大学のヘンドリック・ヨンカース准教授に聞く(写真1)。
(聞き手は日経ホームビルダー編集長、浅野 祐一)

写真1■ オランダ・デルフト工科大学准教授 ヘンドリック・ヨンカース氏<br>1999年にオランダ・フローニンゲン大学の自然科学学部微生物環境生態学科で博士号を取得。同年から2006年までドイツ・ブレーメンにあるマックス・プランク研究所に勤務し、主任研究員を務める。06年にオランダ・デルフト工科大学准教授に就任。生物を活用したコンクリートの開発を手掛けて現在に至る。生物を活用した自己治癒コンクリートの開発では、15年に欧州特許庁が実施する欧州発明家賞にノミネートされた(写真:都築 雅人)
写真1■ オランダ・デルフト工科大学准教授 ヘンドリック・ヨンカース氏
1999年にオランダ・フローニンゲン大学の自然科学学部微生物環境生態学科で博士号を取得。同年から2006年までドイツ・ブレーメンにあるマックス・プランク研究所に勤務し、主任研究員を務める。06年にオランダ・デルフト工科大学准教授に就任。生物を活用したコンクリートの開発を手掛けて現在に至る。生物を活用した自己治癒コンクリートの開発では、15年に欧州特許庁が実施する欧州発明家賞にノミネートされた(写真:都築 雅人)
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――そもそも、生物でコンクリートを自己治癒するというメカニズムはどのようなものなのですか。

 バシラス属のバクテリアの活動を用います。乾燥すると胞子状の殻をまとうバクテリアで、休眠状態で200年も生存することができる生物です。高いアルカリ性の環境下でも死滅しない種です。

 バクテリアに栄養分である乳酸カルシウムを与え、水と酸素が供給されると、バクテリアが活動を始めます。バクテリアは乳酸カルシウムを分解し、二酸化炭素を排出。炭酸カルシウムが生成し、ひび割れを埋める成分として働きます(図1)。

図1 ■ 治癒成分(炭酸カルシウム)が生成される反応式
図1 ■ 治癒成分(炭酸カルシウム)が生成される反応式
バクテリアが乳酸カルシウムを栄養源とし、水、酸素の供給を受けて活動する際の反応式。炭酸カルシウムが生成される(資料:67ページまでデルフト工科大学)
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――コンクリート中に微生物などをどのように入れておくのですか。

 バクテリアを乳酸カルシウムで包んで粒子状にします。これを生分解性プラスチックで覆って混和材を作ります。コンクリートに練り混ぜると、生物の反応を利用した自己治癒コンクリートができます。生分解性プラスチックは、練り混ぜ時には混和材の形状を保ちます。ところがコンクリートが固まると殻がもろくなっていきます。コンクリートにひび割れが生じて水が浸入すると、もろくなった生分解性プラスチックの殻を破って水は栄養素やバクテリアに届きます。ここで、休眠していたバクテリアが活性化するのです。

――バクテリアと栄養分をひと塊の混和材として入れるアイデアは、すぐに実現できたのでしょうか。

 当初、バクテリアと栄養材を軽量骨材に入れる方式でスタートさせました。しかし、水の供給によってひび割れが埋まる効果は確認できたものの、軽量骨材の量が多くなって、コンクリートとしての強度確保が難しいという壁に突き当たりました。