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 沖縄県が識名トンネル(那覇市)整備の際に国から不正受給した補助金を返還した事件で、那覇地裁は県に対して7月19日、この工事を担当していた当時の県職員2人に計7178万円の賠償を請求するよう命じる判決を出した。原告の住民グループが、補助金の返還で県に損害を与えたとして県職員やトンネル施工者などに賠償請求することを求めていた。県は「個人に賠償させるのは適切でない」として8月2日に控訴した。

識名トンネル(写真:沖縄県)
識名トンネル(写真:沖縄県)
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 識名トンネルは全長559mで2010年10月に完成した。施工者は大成建設・仲本工業・内間土建JV。後に会計検査院の検査がきっかけで、県が本体工事の追加工事を、別の部位の新規工事と偽って大成JVに発注していたことが判明した。国は関連する補助金の約5億8000万円を県に返還させた。

 住民グループは返還額のうち利息に当たる7178万円を県が受けた損害と見なして、当時の仲井真弘多知事のほか、担当職員だった土木建築部部長と南部土木事務所所長(いずれも役職は当時)、さらに大成JVに賠償させるよう県に求める訴訟を12年12月に提起した。

 那覇地裁の判決は、金額については住民の主張の満額を認めたが、請求先は担当職員2人だけとした。実態と異なる工事契約について仲井真知事は認識も予見の可能性も無いと認定。大成JVは実態と契約の違いは認識していたが、それが県に補助金返還に伴う損害をもたらすことは予見できなかったとして、賠償責任を否定した。

 一方、県は判決に対し、締結に関与した職員に重過失や悪意、私利私欲は無く、個人への賠償請求は不適切との見方を示している。

契約上の慣行を大成JVが拒否

 審理の過程で、県が大成JVと結んだ契約の書面に記載の欠落があり、混乱を招いたことも分かった。

 沖縄県の工事では、契約を変更して工事を追加したり、同じ施工者に追加工事を随意契約で発注したりする場合に、当初契約時の落札率を追加工事などの契約額にも適用する慣行がある。県はこの慣行を契約書に記載していなかった。

 大成JVが受注した識名トンネル本体工事の契約金額は23億3100万円で、入札時の落札率(請負比率)は約47%と低かった。県の意向による工法変更などで追加工事が必要になった際に、大成JVは慣行に従った契約を拒否。そこで県は新規工事に偽装した発注を企てた。

 沖縄県土木建築部は13年1月以降、工事発注で同様の契約トラブルを予防するため、追加工事などの契約額にも請負比率を適用すると当初契約で特記仕様書に明記している。