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 清水建設は、山岳トンネル底部の掘削量の過不足を色分けして投影するプロジェクションマッピングシステムを開発した(写真1)。作業員が一目で掘削の進捗を把握できるようにすることで、掘り過ぎによる無駄を減らす。2018年度から実用化する予定だ。

写真1■トンネル底部の掘削時に、プロジェクター(写真左)で掘削量の過不足を色分けした画像を投影する。一度に幅4m、奥行き7~8mほどの範囲に映し出せる。黄色より暖色は掘削の不足を、寒色は掘りすぎていることを示す(写真:清水建設)
写真1■トンネル底部の掘削時に、プロジェクター(写真左)で掘削量の過不足を色分けした画像を投影する。一度に幅4m、奥行き7~8mほどの範囲に映し出せる。黄色より暖色は掘削の不足を、寒色は掘りすぎていることを示す(写真:清水建設)
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 投影までの流れは以下の通り。まず、掘削箇所の近くに、3次元スキャナーと投影用のプロジェクターとを組み合わせた専用の器材を設置する(写真2)。システムを起動すると、3次元スキャナーが周辺の点群データを自動で収集。事前に登録したトンネルの設計データと照合し、差分を計算する。

写真2■プロジェクターは、会議室などで使う一般的なものを使用。水滴やちりを防ぐため、箱形のカバーで覆った。3次元スキャナーは、北洋電機(大阪市)の小型レーザースキャナーを採用した(写真:清水建設)
写真2■プロジェクターは、会議室などで使う一般的なものを使用。水滴やちりを防ぐため、箱形のカバーで覆った。3次元スキャナーは、北洋電機(大阪市)の小型レーザースキャナーを採用した(写真:清水建設)
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 その後、システムは計算結果から5cmごとの階級で色分けした画像を作成し、プロジェクターでトンネルの底部に直接投影する。データの収集から投影までの時間は約1分。投影する画像を数分おきに更新するよう設定すれば、ほぼリアルタイムで掘削の進捗を確認できる。

 点群の間隔は5cmで、取得するデータの総容量は数MBと小さい。「バックホーの“爪”の大きさは約5cmなので、精度は同程度で十分。データを軽くして処理時間の短縮を優先した」(清水建設技術研究所地下技術グループの青野泰久氏)。

 画像を投影する範囲は、プロジェクターを置く高さや角度によって調整する。正確な投影には、トンネル内での器材の傾きと位置の特定が鍵となる。このため、3次元スキャナーは計測の度にトンネル内を360度回転し、約30万~40万点の点群データを取得する。トンネルの形状を把握するとともに、壁面に設置した基準点との距離を計測し、スキャナーなどの向きや位置を割り出す。

 トンネル底部の掘削の深さが設計よりも浅いと、インバート部のコンクリートの厚さが不足し、品質を確保できない。逆に掘り過ぎると、設計数量以上のコンクリートの打設を要するほか、余分な掘削土砂を処理する手間やコストが生じる。

 従来は掘削を止め、作業員が1断面当たり10~15分かけて定規などで掘削の深さを測っていた。開発したシステムならば、計測時間を10分の1以下にまで縮められる。計測のために不安定な掘削面に人が下りる必要がなくなるため、安全性の向上も見込める。

 清水建設は、西日本高速道路会社が発注したトンネルの工事現場で実証実験を行い、投影画像の視認性などを確かめた。今後は器材の小型化や、処理のさらなる高速化などの改善に取り組む。