昨年に岩手県の小本川で発生した水害を契機に、新たな水位計の開発が急ピッチで進む。国が設置基準を迅速にまとめる動きも出てきた。近い将来、中小河川で水位計を設置する新規事業が拡大しそうだ。
9月上旬、横浜市の住宅街を流れる鶴見川水系の鳥山川で実施する公開実験に、多くの報道陣と技術者が押し寄せた(写真1)。当日集まったのは100人超。実は申し込みはその倍で、自治体職員向けの公開を10月に再度、開いたほどの注目度だ。
彼らのお目当ては、革新的な河川管理を担う新たな水位計だ。「たかが水位計」と思ってはいけない。コアな技術を見に防犯設備会社の担当者も参加したようで、これまでにないコンセプトの水位計が出そろった。
国土交通省は中小河川への本格的な設置・普及を目指して、低コストのクラウド型・メンテナンスフリー水位計の開発を先導している。今年1月に企業同士の“お見合い”の場を設けて、そこで成立した12チームが新しい水位計の開発に着手。鳥山川での現場実証段階に移り、新水位計の全貌が初めて公になった。
河川管理や今後の河川計画で必要な情報として通常時の水位を測るのではなく、洪水時の水位変動の計測に特化した仕様を課しているのが大きな特徴だ(図1)。
- 無給電で5年以上のメンテナンスフリーの実現
- 橋梁などへの添架など様々な場所に容易に設置
- 1カ月に1000円の安価な通信コストを目標
- 1台100万円の低価格を目標
- 平常時は1時間、降雨時は5分ごとにデータを送信
- 各水位計のデータを各管理者などへ情報提供する仕組みを構築
- クラウド側で各水位計の状態を監視
平常時は1時間ごと、緊急時は5分ごとにデータを更新。主に自治体などでの活用を目的に、5年以上のメンテナンスフリーを求めている。そして極めつけは、「水位計1基を100万円台」という低コストの目標設定にした。