砂防の渓流監視で培った技術を使う

 氾濫中の河川はいつ破堤するか分からず近づくのが危険なために、水位だけでなく堤防の様子を知りたいというのが河川管理者の本音だろう。ただし、監視用のCCTVカメラは高価で、複数箇所への設置は現実的でない。その点、画像処理式は水位データを取れ、さらにリアルタイムで堤防付近の監視画像も得られる。

 画像処理式は2チームが採用していた。1つは、日本工営チームが開発した画像解析による水位計測だ。堤防に設置されている目盛りが振られた装置(量水標)をカメラで撮影して、画像から直接水位を読み取る。

 気になるのは夜間の視認性だ。それを解決するために同チームは反射板を採用した。赤外照明を当てると、照射した方向に効率よく光を反射させる。流水に隠れていない反射板の長さを読み取ることで水位を測る仕組みだ(写真2)。さらに豪雨対策として、カメラの前に水滴をはじくエアワイパーを設置した。

写真2 ■ 左の画像は日中の画像取得イメージ。堤防左側にあるのが量水標。右の画像は夜間の取得イメージ。2本の白く見える線のうち、右側の反射板の光を頼りに長さを測り水位情報を得る(写真:日本工営、ブレインズ)
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写真2 ■ 左の画像は日中の画像取得イメージ。堤防左側にあるのが量水標。右の画像は夜間の取得イメージ。2本の白く見える線のうち、右側の反射板の光を頼りに長さを測り水位情報を得る(写真:日本工営、ブレインズ)
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写真2 ■ 左の画像は日中の画像取得イメージ。堤防左側にあるのが量水標。右の画像は夜間の取得イメージ。2本の白く見える線のうち、右側の反射板の光を頼りに長さを測り水位情報を得る(写真:日本工営、ブレインズ)

 「元々、砂防分野で夜間の渓流監視に撮影画像を活用できないか模索していた。そこで培った技術を使っている」。日本工営名古屋支店技術部社会システムグループの松本定一課長補佐は、こう話す。

 もう1つは、情報通信研究機構やクレアリンクテクノロジー(京都府精華町)、アラソフトウェア(北海道北見市)、パシフィックコンサルタンツから成るチームの動画像を使った水位計だ。

 動画を撮り続けるとなると無給電では難しいので、一定間隔で瞬間的に動画を撮影。それを解析して平均水位を算出する。氾濫危険水位など一定の水域に到達すれば、動画配信に切り替えられる。

 見せ方がユニークで、量水標が現地になくても、画像に「バーチャル量水標」を表示して、一目で水位が把握できるようにした(写真3)。

写真3 ■ 通常の量水標(右)の横にバーチャル量水標(左)を表示している。バーチャル量水標を開発したアラソフトウェアは元々、人物検知や土石流の解析などを得意としていた。水位計に関わるのは初(写真:アラソフトウェア)
写真3 ■ 通常の量水標(右)の横にバーチャル量水標(左)を表示している。バーチャル量水標を開発したアラソフトウェアは元々、人物検知や土石流の解析などを得意としていた。水位計に関わるのは初(写真:アラソフトウェア)
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