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 熊本地震で被災し、復旧工事が進んでいる熊本県山都町の国指定重要文化財「通潤橋」で5月7日正午ごろ、上流左岸側の石垣が一部崩落した。修復を終えた天端から2段目までの「手すり石」を含め、5段程度が崩れた。気象庁によると山都町では当日、同町の観測史上2番目となる1日当たり158.5mmの降雨を記録しており、この影響が考えられる。

石垣の一部が崩落した「通潤橋」。「手すり石」の積み直しなどを終えていた(写真:山都町)
石垣の一部が崩落した「通潤橋」。「手すり石」の積み直しなどを終えていた(写真:山都町)
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 崩落箇所は幅約10mで、高さ約3.4m、奥行き約1m。近くの「道の駅」の職員が気づいて山都町に連絡した。崩落を受け、町は崩れた部分に土のうを積む応急措置を講じた。

 通潤橋は1854年に完成したアーチ構造の水路橋だ。アーチスパンは27.5mで、逆サイホンの原理で深さ約30mの谷を越えて下流へ農業用水を送る。

 2016年4月の熊本地震で石造の通水管が漏水し、石垣の上端の一部がはらみ出したことを受け、17年から修復を進めている。これまでに橋の手すり石の積み直しや、橋の上の通水管の施工を完了。その後、逆サイホンを構成する吹き上げ口の施工を進めていた。

熊本地震前からはらみ出し

 山都町では、崩落の原因究明や対策について、有識者や地域住民などで構成する通潤橋保存活用検討委員会に諮って検討する考えだ。この委員会は、重要文化財である橋の保存などを考えるために町が熊本地震前の16年2月に設置した。

 熊本地震の復旧も、この委員会に諮って施工範囲を決めた。委員会は地震前に計測した3次元データで、石垣の中腹付近に経年劣化によるはらみ出しを確認。被災後に再計測して比較すると上端付近が最大10~15cm、震災前よりせり出していた。委員会は、経年劣化の部分は地震にも耐えたことから、すぐに崩れることはないと判断。天端から2段目までの最小限の範囲に修復をとどめた。

 石垣の一部崩落を受け、震災で壊れた箇所の修復についても現在、工事を見合わせている。石垣の復旧などと併せて、全体の工程を見直す考えだ。今後の調査結果によっては、単なる現況復旧ではなく、新たな補強工事が必要になる可能性もある。来年3月に予定していた復旧工事の完了は不透明な状況になった。

 農業用水の確保については、橋の上流側に埋設したヒューム管で水を下流に供給しているので問題はない。このヒューム管も熊本地震で被災したが、17年3月に復旧工事を終えている。