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 ピーエス三菱は金沢大学の鳥居和之特任教授の研究グループと共同で、コンクリート構造物にチタンワイヤセンサーを埋め込んで、内部の鋼材の腐食状況を遠隔地からモニタリングするシステムを開発した。従来式のセンサーと比べてコストを20分の1程度に抑えられる。

 コンクリート内の鋼材腐食の進捗状況を評価する手法には、自然電位法がある。腐食した鋼材は負に帯電するので、照合電極を当てれば、鋼材につないだ計測端子との電位差から腐食の進捗が分かる。既設のコンクリートなどに適用する場合は2タイプあり、コンクリート表面に照合電極を当てて腐食箇所を探るのが1つ。もう1つは、補修済みの鉄筋の再劣化などを確認するため、コンクリートをはつり取って照合電極を埋め込む方法だ。

 ただし後者の埋め込み式の場合、照合電極として一般的に使われている飽和硫酸銅(CSE)が高価なため、複数の箇所に設置することがコストの面から難しかった。さらに、縦20cm×横20cm×深さ6cmの規模ではつり出す必要があり、断面修復に手間がかかっていた(図1)。

図1■既設コンクリートへの照合電極の設置例
[従来]
[従来]
(資料:ピーエス三菱)
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[チタンワイヤセンサー]
[チタンワイヤセンサー]
(資料:ピーエス三菱)
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 一方、開発したシステムで使うチタンワイヤセンサーは、コストがCSEの20分の1と非常に安価だ。さらに既設コンクリートに直径2.5cm、長さ5cm程度の穴を開けて設置できるサイズなので、構造物への損傷を最低限に抑えられる。

 コンクリートの新設時にセンサーを埋め込めば、予防保全にも使える。長めのチタンワイヤセンサーを埋めれば、1本で広範囲の鋼材腐食を検知可能だ(図2)。市販のCSEは長さが13cm程度で、設置付近の鋼材の腐食状況しか検知できない。新設時にモニタリング用として使うとなると、複数箇所に設置せねばならず、コストがかかり実現は難しかった。

図2■新設コンクリートへのチタンワイヤセンサーの設置例
図2■新設コンクリートへのチタンワイヤセンサーの設置例
(資料:ピーエス三菱)
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 ピーエス三菱などはチタンワイヤセンサーと合わせて、遠隔地で鋼材の腐食情報を得られる「無線遠隔システム」も開発した。さらに、外部電源方式の電気防食の稼働状況が一目で分かる「イージーMモニター」を、鋼材の腐食検知用にカスタマイズ。専門的知見がない自治体の職員などでも、鋼材の塩害劣化を簡単に把握できるようにした。

 ピーエス三菱は将来的に、橋の1径間分の鋼材を1本のセンサーでモニタリングする目標を掲げる。チタンワイヤセンサーを長尺にする技術の確立は、これからの課題だ。同社と金沢大学の研究グループは、内閣府で進める戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の一環で開発を進めていた。