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 鹿児島市の急傾斜地崩壊危険区域で掘削中の法面が9月14日に崩落した事故で、工事の許可を出した鹿児島県は、申請どおりに施工しなかった事業者に問題があるとの見解を明らかにした。一方、崩落した斜面の地質は当初の想定と異なっており、県が許可した施工方法どおりに工事を進めていても、崩れた可能性がある。危険性の高い民地の法面で、行政がどの程度、安全性の確保に関与すべきかが問われている。

ドローンが捉えた鹿児島法面崩落
民間事業者による掘削が原因で発生した土砂崩落の現場。この工事とは無関係だが、地元で宅地造成などを手掛ける郷土開発(鹿児島市)が、近隣住民などへの情報提供を目的にドローンで撮影した

南側から見た崩落現場。現場で作業をしていた男性がけがをしたが、死者は出なかった。郷土開発(鹿児島市)が地元への情報提供のために、独自にドローンを飛ばした。崩落が発生した9月14日に撮影(写真:郷土開発)
南側から見た崩落現場。現場で作業をしていた男性がけがをしたが、死者は出なかった。郷土開発(鹿児島市)が地元への情報提供のために、独自にドローンを飛ばした。崩落が発生した9月14日に撮影(写真:郷土開発)
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 崩落のあった現場は、3分勾配(約73度)の民有地だ。「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律」(急傾斜地法)に基づいて、県が危険区域に指定している。県は1978年度に擁壁やモルタルの吹き付け、法枠などの崩落防止工事を実施していた。

 地権者である事業者は2012年度、事務所の建築を目的とした工事の許可を県から受けた。既存の擁壁やモルタル吹き付け部分には手を付けず、崖下の私道付近を深さ約2mにわたって掘削する工事だった。

 ところが今年4月、事業者が許可の範囲外で、モルタルの吹き付け部を撤去していたのを県の職員が発見。建築する建物も、事務所から共同住宅に変えていたことが発覚した。

 モルタル吹き付けを撤去してしまうと、法面が崩壊する危険性が高まるので、県は事業者に対して工事の変更申請を求めた。

 県が認めた工事内容の変更点は、以下のとおり。まずは、モルタル吹き付け部や擁壁の取り壊しを認めた。さらに、共同住宅に変えたために、より大規模な基礎工事が必要となったので、掘削深さを約3mに変更した。一方、モルタルの撤去や掘削によって危険な山肌があらわになるので、コンクリートの吹き付けで安定させることも盛り込んだ。

 県の職員が7月に現地を見に行った際、吹き付けされていない法面があり、さらに想定以上に地山をえぐる形で掘削しているなど、許可と異なる行為が見られた。県は事業者に養生や早期の吹き付けを指導。9月4日時点で吹き付け作業が行われていることを確認したが、崩落した14日までに終わっていたかどうかは定かでない。

崩落が発生した法面(青丸で囲んだ箇所)は、急傾斜地崩壊危険区域に指定されている。鹿児島県の資料をもとに日経コンストラクションが加筆
崩落が発生した法面(青丸で囲んだ箇所)は、急傾斜地崩壊危険区域に指定されている。鹿児島県の資料をもとに日経コンストラクションが加筆
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