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「東京リアルティの850万円支払い」にみたコンプライアンスの基本

2006/11/24

 ファンド運用会社や投資顧問会社のなかには、オフィスに貸金業登録の看板を掲げているところがある。別に副業として貸金業を営んでいるとは思わなかったが、どんな理由で登録しているのだろうかと常々、疑問に思っていた。

 ある投資顧問会社の人に聞いたところ、業務を通じて不動産を所有している会社の債権を取得することがあるからだという。金を貸している債権者の立場になったうえで、投資家から債権売買の報酬・手数料を受け取ると、貸金業を営んでいるとみなされかねないというわけだ。貸金業を営むなら、行政などに登録する必要がある。「弁護士などの意見を聞くと、おそらく業としてはみなされることはなく、登録しなくても法律違反にならない可能性が高いようだ。ただ、念には念を入れている」と、投資顧問会社の人は話していた。

 先日、日本プライムリアルティ投資法人の運用会社である東京リアルティ・インベストメント・マネジメントが、物件の取得価格が高すぎた可能性があるとして、投資法人に約850万円を支払うことを明らかにした。2001年に物件を取得するにあたって、エンジニアリングレポートで指摘されていた長期修繕費用を反映せずに取得価格を決めていたことを自ら問題にした。長期修繕費用のことを勘案しておけば、取得価格を引き下げる交渉ができていたかもしれないと考えて、同社は850万円を支払うことを決めた。

 しかし、実際に取得価格が高かったどうかなど、だれにもわからない。当時、鑑定価格と同額で取得しており、鑑定会社から「あの時の価格は間違っていた」と指摘されたわけでもない。鑑定評価において、エンジニアリングレポートの長期修繕費用の数値を採用するかどうかは、鑑定会社の裁量に任されている。鑑定評価額で取得したのだから問題はない、という判断だってあり得たのではないか。取得価格が高かったかもしれないという「可能性」を問題視して、5年前の取引価格を見直したことに対して、少し釈然としない気持ちになった。

 ただ、貸金業登録の話を思い出して、念には念を入れて慎重な対応をすることこそ、コンプライアンスの基本なのだと思い直した。可能性がある限り、投資家の中には不信感を持ち続ける人も出てくるだろう。REITへの処分が続くなか、投資家に対して厳格な姿勢を示す意味でも、今回の措置は決して過剰な対応というわけではないのだ。

(徳永 太郎)

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