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音楽プロダクションの“武士の商法”に学ぶ

2006/09/08

 市場の活況を反映してか、不動産投資に新規参入した企業の話を聞く機会が増えてきた。ゲーム会社のジャレコや、ソフト開発のメッツのように、従来なら不動産と縁もゆかりもなかった企業のニュースを書くこともある。取得交渉からバリューアップ、管理体制の構築まで、異業種参入組にとって簡単と呼べる業務はひとつもないが、これが失敗するとは限らないのが業界の不思議なところだ。

 5年ほど前、筆者が取材した企業の中に、ビーイングギザという企業グループがある。B'z、倉木麻衣といった大物アーティストを抱え、90年代前半に一世を風靡(ふうび)した音楽プロダクションだ。以前の取材は音楽関係の記事を書くのが目的だったが、本誌に移ってから、久しぶりに同社の名前を聞いて懐かしい気持ちになった。同社は、本職の不動産会社をしのぐ成功を収めた、異業種参入組の一例と言えるだろう。

 ビーイングギザは、寂れつつあった家具の街、大阪・堀江を流行に敏感な若者が集うファッション街に生まれ変わらせた立役者である。1998年ころから堀江に本社ビル「ギザヒルズ」を構えるビーイングギザは、併設したライブハウスにアーティストを呼び、東に隣接するアメリカ村から若者たちを引き寄せ続けてきた。今や周辺にはしゃれたカフェやブティックが並び、かつてのシャッター通りの風景は様変わりしつつある。

 同社は音楽事業で蓄えた資金を元手に、堀江周辺に30棟以上のビルやマンションを取得し、保有している。財務情報が公開されていないので詳細はわからないが、うなぎ登りの不動産価格は、同社に少なくない含み益をもたらしたはず。周辺の不動産を高値で買い集める同社は、今でも地元の不動産関係者の間で有名だ。当初は“武士の商法”と思われた不動産投資で、ビーイングギザが一応の成功を収めたのは、単に資産運用の手段ととらえず、若者を引き付ける仕かけを作り、街づくり自体に深くかかわる意志を持ち続けたのが理由だろう。

 昨今の新聞を開けば、軒並み最高益を更新する不動産会社の記事が目に飛び込んでくる。5000億円、1兆円といった数字を扱うこうした企業から見れば、ビーイングギザなど有象無象の新規参入組の一つに過ぎない存在だろう。だが、筆者はこの異業種企業の取り組みに、従来の不動産業界が手本とすべき姿勢を見た気がする。

(本間 純)

北堀江のオーク四ツ橋ビル、音楽プロダクションのビーイングが取得

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