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地方の不動産市場は東京の縮小版ではない

2005/04/08

 先日、ある地方都市を訪れた。ほとんど予備知識に乏しく、行く段になってあわてて地図をめくった次第だ。県庁所在地にある駅を降りて、まず目に入ったのが繊維問屋街だ。古びた中小規模ビルが連なり、問屋街のアーケードが幾重にも続いている。週末だったためか、ほとんどが閉店していた。錆びたシャッターからは、想像力をどんなにフル稼働させても、平日のにぎわいを思い描くことができなかった。

 メーンストリートと思われる通りをどんどん歩いてみた。ここでも、シャッターが降りた店ばかりで、人通りもまばらだ。昭和30年代にタイムスリップしたような洋品店も点在している。思いのほか、全国でチェーン展開している飲食店やファストフード店は少ない。

 バスに乗って郊外に出た。15分もすれば、農地の残る住宅地が広がる。戸建ての家は十分に大きく、広い庭には春の花が咲き乱れている。幹線道路沿いに金融機関、公共施設、大型スーパーマーケット、ファミリーレストランなどが並んでおり、子供連れの家族の姿がみえる。駅周辺よりも、人の動きやまちの新しさが感じられた。

 再び駅に戻ると、再開発事業によるオフィスビルが竣工を迎えようとしていることに気付いた。地上12階建てのビルだ。近くでバスを待つ高齢のご婦人たちが、さらに地上43階建てのビルが建つと話していた。こちらの再開発事業は、高齢者向け賃貸住宅を含む超高層マンションになるらしい。

 東京であれば、駅前に新しいビルが完成すると、新しい企業の集積が進んだり、周辺の店舗などがにぎわったりという効果が期待できる。この都市でも駅前の人の流れは変わるだろう。ただ、錆びたシャッターが目立つ繊維問屋街の街並みは大きく変わらないだろうと思った。地方都市の不動産市場は、地域経済そのものに密着しており、地場産業をはじめとする企業の活性化が先決だ。地方都市の不動産市場は、東京の不動産市場の縮小版ではない。まったく違う構造を持っているのだ。そういえば、外国金融機関のディーリングルームやIT長者の住宅の縮小版もなさそうだった。

(橋本 郁子=不動産アナリスト)

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