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年金運用で不動産投資がやりにくい理由

2004/11/12

 「企業年金は、担当者が代わると個人的な意見で運用方針が大きく変わるので、不動産投資はやりにくい」。ある信託銀行の年金運用担当者はこう話す。

 一部の巨大企業を除けば、1社当たりの年金運用額はそれほど大きくはない。さらにリスク分散のために株や債券など様々な方法で運用するので、不動産に投資するにしても、振り向けられるのは少額になる。そのため信託銀行の年金運用担当者は、何社かの資金を合わせて投資することになる。そうでなければ優良物件は買えないし、1口当たりの金額の大きい不動産ファンドへの投資もできないからだ。

 「数社の資金を合わせて不動産ファンドに投資して、大変な目にあったことがある」とある年金運用担当者はこぼす。選んだ不動産ファンドが暴落して損失を出したわけではない。数社のうちの1社が、担当者が代わった途端に「不動産投資はリスクが大きいのでやめる」と言い出したのだ。「新しい担当者は、かつて不動産投資で個人的に損したらしい」(年金運用担当者)。ほかの企業年金は不動産投資をやめるつもりはない。また。その不動産ファンドは運用期間が決まっていて中途解約は難しかった。結局、不動産投資に前向きな企業年金を探して入れ替えたという。

 これに懲りたこともあって、現時点ではこの信託銀行の年金運用担当者は実物不動産や不動産ファンドに投資していない。「株や債券のように流動性が高ければ、企業の年金担当者の方針変更にも柔軟に対応できる。利回りの問題ではなく、流動性が低すぎることが不動産に積極的に投資できない理由だ」と話す。ただ、不動産投資信託(REIT)は流動性が高いということで、少しずつ投資を始めた。「日本のREIT市場は、本格的に投資するにはまだ小さすぎる。もっと拡大してほしい」と期待を寄せている。

(高橋 敏雅)

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