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被害総額503億円の教え

2005/01/07

 被害総額503億円――。三洋電機は12月21日、子会社である新潟三洋電子(新潟県小千谷市)の新潟県中越地震による被害見込み額を公表した。503億といわれてもイメージがわかないが、例えば12月に運営会社ごと譲渡された、ウェスティンホテル東京(目黒区)の売却額が501億円だ。

 新潟三洋電子の被害額の内訳は、機械などの被害で184億円、棚卸資産で46億円、復旧費用などで270億円、復旧のための新たな設備投資で3億円となっている。同社は約2カ月間、操業が停止し、従業員の賃金引き下げを労働組合に申し入れた。一方、親会社の三洋電機は地震被害を受けて業績予想を見直した。140億円の黒字を見込んでいた2005年3月期の連結損益は、地震などの影響で710億円の赤字になる見通しだ。ちなみに新潟三洋電子は、地震保険に加入していなかった。

 大災害は、日ごろ考えもしないリスクを顕在化する。昨年末、大津波に襲われて多数の死傷者を出したインド洋の沿岸地域では今後、津波に耐える鉄筋コンクリートの建物が普及するだろう。以前もこのコラムに書いた通り、都会で巨大地震が起きたら、耐震性の高いオフィスビルの需要が急拡大するに違いない。新潟三洋電子のケースは、地震被害によって従業員の賃金が下がるおそれがあることも浮き彫りにした。経営者だけでなく、従業員の地震対策に対する意識も一気に高まるはずだ。

 巨大地震を経験した人々は、地震で壊れないビルの賃料が耐震性の劣るビルよりも高くて当然だと思うようになるだろう。私がオフィスビルを借りる企業の担当者ならば、ビルの耐震性はもちろん、地震後すぐに業務を再開できるかどうかも重視する。非常用電源といった設備面だけではなく、ビル所有・運営会社の人たちが災害に対してどんな備えをしているかを問うつもりだ。訓練していないことは、とっさの時にできないからだ。逆に考えれば、リスクへの備えは不動産事業者にとって差別化要因になり得る。もうすぐ阪神・淡路大震災から10年が経過する。

(菅 健彦)

日経不動産マーケット情報

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