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「国有地売ります。まずは手付金を…」

2004/11/05

 「払い下げ国有地の転売話が持ち込まれているのだが、うさんくさいので背景を調べてほしい」。知人からこんな依頼を受けたことがある。2002年のことだ。広尾駅に近い約2000坪の土地で、かつては皇室が所有していた。その後、国の所有となり、社会福祉法人に賃貸されていた。興味を覚え、いろいろと調べてみたが、だれが糸を引いているのかはわからかずじまいだった。その後、売却話をでっち上げた当事者が詐欺の疑いで逮捕された。この事件では、土地を購入しようとしたデベロッパーが、手付金をだまし取られる被害に遭っていたようだ。

 今年10月にも、「国から取得した白金台の公務員宿舎跡地約1850坪を、64億円で買わないか」と不動産会社に持ちかけたグループがつかまった。買い主を信用させるため、グループの1人が実在の関東財務局職員になりすまし、偽の払い下げ証明書を提示するなどしていた。こうした国有地払い下げ話は、M資金(巨額の秘密資金が存在し、低利で融資を行うというもの)と並ぶ典型的な詐欺の手口だ。

 「国有地売買に限らず、不動産をめぐる詐欺話はたくさんある」と、ある事情通は語る。いかにも怪しい紳士が直接、売り込みに来ることもあるが、むしろ複数の仲介会社を経由して話が持ち込まれることが多い。舞台の中心は東京よりも地方。単純な土地売買から、全国規模の大がかりな建設プロジェクトへの参加勧誘まで、いくつものストーリーが用意されているという。「仕入れ競争が激しいせいか、最近はある有名デベロッパーがよく引っかかっている。ちょっと調べれば怪しいとわかるはずだが…」と、くだんの事情通はあきれ顔だ。

 不動産投資においては、市場に出回らない情報が多数存在する。その情報の偏在性と市場の不透明性が、儲けの源泉となる半面、怪しげな投資話を生む温床ともなっている。端で見ている分にはおもしろいが、投資環境として健全とはいえないだろう。「『近代化センター』が業界にあるのは、タクシーと新聞セールスと不動産流通だけだ」と指摘する人がいた。不動産投資市場の発展のためにも、市場の透明性を高める努力が必要だろう。

(三上 一大)

日経不動産マーケット情報

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