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歯医者も敗者になりうる時代の不動産投資

2008/05/12

 都心を歩いていると、賃貸マンションの1階に設けられた店舗スペースが意外と空いていることに気づく。例えば、広尾の大通りに面した某マンションは築後数年たった今も店舗テナントが付かず、テナント募集の貼り紙が残ったままだ。

 「テナント募集は本当に難しい」。ある投資会社の開発担当者はこうため息をつく。この会社は駅前でビルを建てた際、住宅付置義務を回避するために、クリニック用のスペースを設けた。テナント募集を始めたところ、歯科医院の希望が多いことに困惑したという。「正直に言うと、テナントとして歯科医院はあまり歓迎していない」(同氏)。

 歯科は開業医の数が多い。厚生労働省の調査によると、2006年時点の歯科医院数は全国で6万7000強。コンビニエンスストア店舗数の1.5倍に上り、特に大都市では過当競争に陥っているという。「イメージとは裏腹に、ワーキングプアとなっている歯科医も多い。あくまでも個人的な見解だが、テナントとしての信用力には疑問を持たざるを得ない」と、くだんの担当者は話す。もちろん繁盛している歯科医院もあるわけで、昨今、世間でよく言われる「二極化」が進んでいる。

 サラリーマンの世界もしかり。国税庁が先ごろまとめた2006年の民間給与実態統計調査によると、通年で勤務した給与所得者のうち、年収が200万円以下の人は前年から4.2ポイント増え、年収1000万円以上の人も同4.4ポイント増えた。ただし200万円以下の人数は1022万7000人、1000万円以上は224万2000人と、数の上では極端にアンバランスな二極化である。こうした中では、賃貸マンションも賃料引き上げは難しい。

 「歯医者」も「敗者」になるという笑えない時代。景気の先行きに不透明感が漂うなか、不動産の開発や投資には、一層と慎重な見極めが必要になりそうだ。

三上 一大日経不動産マーケット情報

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