2025年には約82億人に達する世界人口。世界では、人口増加と同時に高齢化も進む。英エコノミストグループの調査部門であるエコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)の予測では、世界の65歳以上の人口比率(高齢化率)は2025年に11.7%に達するという3)。「平成29年版厚生労働白書」によれば、同年の日本の高齢化率は30.0%となる4)図1-2-4図1-2-5)。

図1-2-4 日本の人口推移予測 (出所:「平成29年版厚生労働白書」を基に筆者が作成)
図1-2-4 日本の人口推移予測
(出所:「平成29年版厚生労働白書」を基に筆者が作成)

図1-2-5 欧米やアジア各国の高齢化率の推移 (出所:「平成30年版高齢社会白書」を基に筆者が作成)
図1-2-5 欧米やアジア各国の高齢化率の推移
(出所:「平成30年版高齢社会白書」を基に筆者が作成)

 日本に比べて世界の高齢化率が低いのは、高齢化は進んでいるものの、少子化は進んでいないからだ。前述のように、2025年には世界の人口が約82億人に達する見込みである。だが、多くの新生児が生まれるため、世界の高齢化率はあまり高くならない。 ただし、高齢者の人口は確実に増える。実際に、2025年における世界の高齢化率は、2010年に比べると3ポイント以上高くなっている。

 ここから予測されるのは、世界的に就労寿命が延びるということだ。こうした動きに先行して取り組んでいるのが日本である。日本では定年を60歳、62歳、65歳へと徐々に引き上げている。大企業を中心に、定年が65歳というところも増えつつある。特に、医療/福祉や教育/学習支援、運輸/郵便などの業界では、65歳定年の比率が2割を超え始めている5)図1-2-6)。この数年で70歳ぐらいまで働く人が増えている4)図1-2-7図1-2-8)。実際のところ、「シニアセンター」「シルバー人材センター」などの団体が就労を支援したり、シニア人材の就職を支援する専門企業が株式上場したりするケースも目立つ。

図1-2-6 日本における業種別の定年年齢(2016年) (出所:厚生労働省「就労条件総合調査報告」を基に筆者が作成)
図1-2-6 日本における業種別の定年年齢(2016年)
(出所:厚生労働省「就労条件総合調査報告」を基に筆者が作成)

図1-2-7 日本における年代別労働力人口の推移 (出所:「平成30年版高齢社会白書」を基に筆者が作成)
図1-2-7 日本における年代別労働力人口の推移
(出所:「平成30年版高齢社会白書」を基に筆者が作成)

図1-2-8 65歳以上の正規・非正規職員数の推移 (出所:「平成29年版高齢社会白書」を基に筆者が作成)
図1-2-8 65歳以上の正規・非正規職員数の推移
(出所:「平成29年版高齢社会白書」を基に筆者が作成)

 この傾向は日本だけにとどまらない。筆者は、先進国の就労寿命は70歳前後まで延びていくと見ている。なかには「○○人はあまり働かないのでは?」というイメージを持つ方が少なくないかもしれないが、北欧の一部の国を除けば、老後の生活が経済的に厳しくなるのはどこの先進国も同様である。従って、70歳ぐらいまで働かざるを得なくなるのは間違いないだろう。

■ 高齢者の負担が増える方向へ

 先進国ではシニア人材の就労に対する支援サービスなどが登場する一方で、高齢者向けのユニバーサル・ヘルス・カバレッジの見直し議論が活発化するだろう。実際に日本では、厚生労働省において審議が始まっており、2018年中に何らかの結論を出す見込みである。現状では、高所得の高齢者は負担額を1割ではなく、それ以上に増やす方向で検討されているようだ。

 米国のオバマケアは、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ自体がないところからスタートしたため、所得の低い高齢者だけを対象にすることができた。しかし、すでにユニバーサル・ヘルス・カバレッジを導入している国々は、高所得の高齢者の負担額を引き上げて、政府側の負担を減らす施策を打ってくることになるだろう。

 日本で果たして実現できるのか。その大きなカギは、時の政府の支持率である。日本の場合は、議会民主制を採用しているため、政権を担当している政党の支持率が重要になる。支持率が高ければ、国民に対して負担増を強いる仕組みの導入が可能になるだろう。しかし、支持率が低ければ、政権を失う危機感から、新しい仕組みの導入に踏み切れない可能性が高い。

 加えて、日本では若年層に比べて高齢者層の投票率が高い。このことが特に高いハードルになるだろう。高齢者の負担増につながる仕組みの導入は難しくなる。実現の可否は、支持率が高い政権が国民に対していかにうまく提案できるかにかかっているといえるだろう。

参考文献

3) EIU、『グローバル・メガトレンド2017-2050』、日経BP社、2016年12月.

4) 内閣府、「平成30年版高齢社会白書」、2018年6月.

5) 厚生労働省、「就労条件総合調査報告」、2016年.