日本では、「POCT(Point Of Care Testing)」はポータブル装置や診断キットを用いた保険適用の医療検査と定義される。一方、海外では個人のヘルスケア検査も対象であり、その売上高は約40%に及ぶ1)。スマートウォッチなどモバイルヘルスケア技術の進展は目覚ましく、近い将来、臨床検査項目も測定可能なことから、ここでは、モバイルヘルスケアも含む広義の定義とする。

 2025年に団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり人口の25%を超える「2025年問題」が目前に迫り、医療給付費は2016年度41.3兆円から2025年度54.0兆円に、介護給付費は2016年度10.4兆円から2025年度19.8兆円と特に後者は大幅な支出増加が予想されている。

 日本政府は、セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)のみならず、医療と介護の公的保険費を効率的に抑制するため、日本独自の「地域包括ケアシステム」施策を着実に進捗させている。

 2018年度には第7次医療報酬と第7次介護報酬を同時改定し、医療・介護サービスの整合的な整備、遠隔医療、密接な医療・介護連携などに報酬が拡充、手当された。「未来投資戦略2017」では、Society 5.0に向けた戦略分野として、健康寿命の延伸を取り上げ、健康・医療・介護データのPHR(Personal Health Records)への基盤整備や健康予防インセンティブの強化を実施することとしている。

 世界保健期間(WHO)による健康の定義に従って、身体、 精神、社会参加と生きがいに分類して俯瞰する。かくれ糖尿病に続く、かくれ心不全などの生活習慣病健診、ストレスや自律神経系計測による個人メンタルモニター、高性能な歩数計やつながりなどの社会参加ログ、美容やペット関連の健康ログなど、新しい市場が期待される。

 市場形成は、ウエアラブル端末などデジタル機器の利用に積極的な青年や壮年層、健康やメンタルヘルスが気になる中高年層や健康企業の従業員、美容やペットなどに生きがいを感じる富裕層、在宅医療・看護でバイタルモニターが必要な高齢者層など、年代層ごとに異なるモチベーションにより個別に行われる。また、中長期的には、「2025年問題」の解決に資する在宅医療用POCT市場と新規モバイルヘルスケア市場が融合し、本格的なホームヘルスケア市場が到来する。

 また、熊本地震ではPOCTを用いた臨床検査支援活動が組織的に行われた。国際協力機構(JICA)の国際緊急援助隊のように展開することが期待される。図1に健康、医療、介護を支援するモバイル・ヘルスを含むPOCT市場概要を示す。成長市場や未開拓の潜在市場が存在する。

 世界のPOCT市場は、(1)診断・健康検査では、167億米ドル(2016年)から209億米ドル(2024年)に、(2)モバイルヘルスケアでは、239億米ドル(2017年)から1184億米ドル(2025年)と見込まれる。日本のPOCT市場は、(1)臨床検査では、1040億円(2014年)から1100億円(2021年)に、(2)モバイルヘルスケアでは765億円(2016年)から1685億円(2025年)と見込まれる。

図1 健康・医療・介護支援POCT(モバイルヘルスケアを含む)市場 (筆者が作成)
図1 健康・医療・介護支援POCT(モバイルヘルスケアを含む)市場
(筆者が作成)